物理キーにカタチに名前、コイツは今までと違う!
近年のスマホよろしくタッチパネルに基本を頼っていた操作系に、時代を逆行するように物理キーが付いたこと。iriverが「光と影の彫刻」と語っていた従来のスタイルからは随分と離れていること。そしてその名前から「AK」の文字列が消えたこと―― Astell & Kernから新作「KANN」が登場したときには、僕は少なからぬ驚きを禁じえなかった。
同時にポータブルオーディオというジャンルで最高級クラスのAK380を抱える同ブランドにとって、次の一手はこう来たかという興味を惹かれずにはいられなかった。なにせAK380は最高級クラスのAKM4490 DACをデュアル搭載し、外付けの専用アンプユニットを用意、そして価格は頭ひとつ飛び抜けた50万円。これでもう全部やりきった感があり、一体次はなにをやるのだろうかという疑問は多くのオーディオファンが抱いていたはずだ。
本体価格、12万9980円。いろんな意味で“新機軸”が盛り込まれたKANNの試聴機をお借りすることができたのでレビューする。なお、試聴機は試作モデルで、製品版とは外観が異なる部分があることをあらかじめお断りしておく。
氷山をイメージしたというケースがシャープさを演出
ケースは背面が波打っている縦のラインが入ったもので、従来モデルと比べると随分と厚みが増している。それもそのはず、6200mAh/3.7Vという大容量リチウムイオンポリマーバッテリーを搭載し、連続駆動時間が最大14時間に増えた。ボディーサイズは約幅71.23×高さ115.8×奥行き25.6mmで、重量は約278g。手に持ってみるとズシリという質量感があり“小型プレイヤー”と言うには少々距離を感じる。
大きな特徴の物理キーは本体上部に電源ボタン、画面下部にはクリック感のある巻き戻し、再生/一時停止、早送り、そしてホームボタンがそれぞれ用意され、曲面になっている本体右側上部にはダイヤルボリュームという配置だ。いずれも別段動作に引っかかりを感じるようなことはなく、操作感は良好。UI自体は従来機と変わっていないので、同ブランドのユーザーならば違和感なく操作できるだろう。
KANNのもうひとつ大きな特徴は外部ストレージ用にフルサイズのSDスロットが設置されたこと。音声出力は本体上部に、そのほかのポートは本体下部にまとめられており、カードスロットはフルサイズとmicroSDが仲良く並んでいる。これも従来機より大柄になったゆえの恩恵で、1gでも軽く、1mmでも薄くを追求する現代ポータブルデバイスのトレンドをあえて逆行することで、カードスロットを置く物理的余裕ができたわけだ。持ち歩いて使うものだから薄くて軽いに越したことはないが、ほんの少し大きくすることで得られる容量の恩恵はかなり大きく、現状手に入る最大の512GBカードも認識する。