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電気飛行機、10年以内に離陸か?

2017年04月05日 21時59分更新

文●Jamie Condliffe

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米国で、10年以内の電気飛行機の就航を目指すスタートアップ企業が相次いで事業計画を発表した。電池テクノロジーの進化で小型飛行機なら実現性が高まっているが、中型機以上の電気飛行機は依然としてばくちの要素がある。

お客さま、当機は間もなく離陸いたします。出発に先立ち、シートベルトをお締めください。テーブルは元の位置にお戻しください。航空機の電池が充電済みかご確認ください。10年以内に電気旅客機の製造を目指す野心あふれる新スタートアップ企業2社の離陸前アナウンスは、こんなことになるかもしれない。

ボーイング(米国の航空宇宙機器メーカー)とジェットブルー(米国の格安航空会社)が支援するズーナムエアロは5日、10~50人の乗客を乗せて約1100km(東京・札幌間は約830km)飛行できる電気飛行機の製造計画を発表した。ズーナムは米国で、利用率の低い空港での運航を計画中で、空中バス事業とでもいえそうな、地方都市間の効率的な移動手段の提供を目指す。ズーナムは、2020年代前半の就航を目標にしている。

ズーナムは、ライト・エレクトリック(シリコンバレー随一の投資会社ワイ・コンビネーターから誕生したばかりのスタートアップ企業)と競合することになる。先月ライト・エレクトリックが説明した電気飛行機の製造計画によれば、同社の飛行機はズーナムよりも大きく、乗客は150人、航続距離は約480km(ロンドン・パリ間は約340km、東京・京都間は約370km)だ。ライトも10年以内に自社便を就航させたい考えだ。

ズーナムやライトは、大手の一流航空会社との競争に臨むことになる。以前、ボーイングは燃料電池で飛ぶ小型飛行機を飛行実験した。最近、エアバスは完全に電動式の2人乗り飛行機、Eファンの飛行実験をした。

ズーナムやライトの目標は立派だ。航空業界の温室効果ガス排出量はドイツ一国の排出量とほぼ同じであり、大陸間、大洋間の長距離飛行でなくても排出量を削減できれば、地球の大気を浄化する最初の一歩になる。また電気飛行機は一般的な航空機よりも騒音が少ないため、ズーナムが就航を検討する比較的閑静な地方の空港付近の住民にも、さほど迷惑にならないはずだ。

ズーナムもライトも、事業計画が確実に飛び立つには、電池テクノロジーの改良にかけることになる。MIT Technology Reviewの以前の記事にあるとおり、2人または4人乗りの小型電気飛行機が飛び立つのに必要な電池テクノロジーは十分に発達しており、電気飛行機による移動は、以前ほど現実離れしたアイデアではなくなった。しかし、50人以上の乗客を運ぶとなれば問題は別であり、より大きな機体と高い推力が必要だ。太陽光パネルが小型飛行機の世界一周を実現したともいえる一方で、大型飛行機には現実的な選択肢ではない

現実的にいって、完全な電気旅客機を飛び立たせるにはどうしても次世代電池が必要だ。しかし、市販の電池テクノロジーは急には進歩しにくく、次世代電池テクノロジーが誕生するまで、今後何年かかるかは不明だ。電池テクノロジーでブレークスルーがすぐに起きないなら、ズーナムとライトが事業を飛び立たせるには、ハイブリッド・テクノロジー(両社が約束している独自のアイデアの完全再現とはいかないまでも、いくらか実現できる可能性がある)を使わざるを得ない。

(関連記事:BBC, VentureBeat, “Once a Joke, Battery-Powered Airplanes Are Nearing Reality,” “電池のイノベーション うまくいかない本当の理由”)


転載元(MIT Technology Review)の記事へ

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