PCを海や湖に沈めてしまえば
冷却コストはほぼゼロになる
藤原准教授によると、後付けでスマホに防水機能を持たせるコーディングのニュースを見て「マザーボードでもいけるんじゃないか?」と思ったのが液浸冷却のきっかけだという。
また鯉渕准教授は「楽しそうだったから」と自作PCファン特有のノリも見せた。藤原准教授は、川や海、もしくは水で冷却できれば、安価で扱いやすく、かつ効率的なシステムを構築できるのではないかと考えたそうだ。
実験開始は2013年から。藤原准教授は、気化させた樹脂が基板の部品内部まで入り込んで均一な皮膜を形成する化学的気相成長法に注目。パリレン樹脂でマザーボードを防水加工する方法に至った。パリレン樹脂の厚さが薄いと防水機能が弱まるので、製造工程で最大の厚さである120μmにしているという。
2016年の実験では海で40日間、水道水で約3ヵ月間(53日間)の連続動作実験をクリアしている。
鯉渕「海没させたバージョンは、PCの熱で貝が群がり養殖みたいになってしまいました。養殖場とセットでの運用がいいかもしれないですね。それに、海水はダメージがあるのでやっぱりダメかもしれない。まだこのあたりは不明な部分が多いです」
ギリギリの浮力で浮かぶ箱を作って、潮の満ち干きで回転しないようにふたつのいかりで固定。55日後に引き上げたときには、箱に貝がビッシリとついていたそうだ。
成功の裏には数々の失敗も
パリレン樹脂の厚さはどれがいいのか、どれくらい耐えるのか、それ以前にどのマザーボードがいいか、などは最近の研究結果だという。もちろん、そこに行き着くまでには数々の困難に直面してきた。
藤原「開始当初は試行錯誤ばかりでした。エポキシ樹脂でコーティングしてみたり、容器に密封しようとしたり、いろいろやりました。ホント失敗の連続でしたよ」
そう言いながら、数々の失敗作を披露してくれた。
ASCII読者向けにお手軽なやり方の提案として、「密封したPCケース内をフロリナートや油で満たせば、カンタンに液浸環境ができますよ」と藤原准教授からアドバイスを受けた。
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