12月に入り今年を振り返る機会がちらほらと出てきている。真っ先にあがるのは新語・流行語大賞だろう。センテンススプリングの方がキャッチーだったのでは? と思ったり、人気グループ解散は衝撃的だったのになんで選ばれてないんだと勘ぐってみたり。今年もいろいろあったなと、しみじみ感じるのがこの時期だ。
では冒頭の写真を知っているだろうか。今年の1枚に選ばれたこの写真は、遠くの炎と微笑する少年のコントラストが印象的だ。撮影されたのは10月21日で、自転車に乗った少年が、モスルの爆発現場前で停車したときの様子。国連が人の壁として犠牲になる可能性があると警告したため、数百人のイラク人家族が土地を離れなくてはいけなくなった状況下で撮影されたという。
衝撃的な1枚だが、さらに驚くのはAI(人工知能)が選んだことだ。
実際は人の脳に強く残ったものをAIが割り出した、というのが正確かもしれない。20~40代の男女に写真をいくつも見てもらい、頭に浮かんだ感想(言葉)をMRI検査で取り出し、今年のテーマである「語り継ぐ」に近い印象を最も集めた写真をAIが選んだそうだ。
企画をしたのはゲッティイメージズ ジャパンとNTTデータだ。ゲッティイメージズは報道・出版・広告などメディア向けの写真・動画を提供しており、保有する作品は2億点近くにのぼる。一方NTTデータはデータ通信やシステム構築事業を展開するシステムインテグレーターだ。NTTデータが提供している脳科学ソリューションが、ゲッティイメージズが持つ大量の写真の中から1枚を選ぶという企画だったという。
ちなみにゲッティイメージズはもうひとつおもしろい取り組みとして、噺家に今年の1枚を選んでもらい、写真に合わせて落語を演じてもらうイベントを開催した。選んだのは立川志らく師匠と桃月庵白酒師匠。ともに落語界ではかなりの実力者だ。
2人が選んだ写真はこちら。
立川志らく師匠は熊本地震の際に撮影された子どもの写真で「子別れ」を、桃月庵白酒師匠は3月に開催されたEUリーダースサミットでの1枚で「松曳き」を演じた。志らく師匠は「地震という大きな悲しみの中でもおもちゃを見つけた瞬間にうれしそうな表情を見せている」と写真についてコメント。白酒師匠は「大喜利のように吹き出しを付けられそうな1枚」と評した。