ドコモは10月28日、2016年度第2四半期の決算を発表した。売上高を示す営業収益は前年同期比3.3%増の2兆2883億4400万円、営業利益は同26.6%増の5855億9700万円で増収増益。通信サービスとスマートライフ領域の双方が好調で、順調に利益を拡大した。
これにともない年間の業績予想を上方修正し、営業利益は300億円増の9400億円、純利益は150億円増の6550億円、フリーキャッシュフローは400億円増の6400億円を予想する。同社の吉澤和弘社長は「顧客サービスの向上と企業としての持続的発展を両立させるのが使命と考えている」と強調する。
営業収益が増加したことに加え、営業費用も同2.8%減の1兆7027億円に削減し、営業利益が2ケタ増を達成した。ただし、償却方法の変更などによる影響が500億円あり、昨年から提供している「ずっとくりこし」などの影響が180億円程度あり、そうした影響を除いた実質的な営業利益は550億円増の5176億円としている。純利益は同27.8%増の4054億700万円だった。
通信サービス事業の営業収益は同2.7%増の1兆8566億円、営業利益は同24.9%増の5247億円。スマートライフ事業は、営業収益が同1.6%増の2504億円、営業利益は同10.6%増の370億円。その他の事業は営業収益が同11.5%増の1934億円、営業利益は同166.5%増の239億円だった。
各事業の収入増に加え、端末販売の減少などに伴う販売関連費用の減少が269億円と大きく、ネットワーク関連費用も485億円の削減となったことで利益を押し上げた。
上期の携帯電話契約数は前年同期比6%増となる7294万契約、スマートフォンとタブレット利用者数は同11%増の3409万件、解約率は0.58%と依然として低水準を維持した。新料金プランとなる「カケホーダイ&パケあえる」の契約数は同1.4倍の3342万契約、「ドコモ光」の契約数は同3.5倍の253万契約となった。これにより、月々サポートの影響を含めたARPU(1ユーザー当たりの月間平均収入)は4420円となり、新料金プランリリース前の4440円に向けて順調に回復している。
音声ARPUは前年同期比10円増の1250円、パケットARPUは同80円増の2990円となり、さらにドコモ光ARPUが同140円増の180円だった。新料金プラン移行が進むことで、ひとり当たりの収入が増加したことが利益の改善に繋がっている。
吉澤社長は、「顧客満足度向上に努めてきた」としてカケホーダイの投入以降、料金サービスの充実を図ってきたとアピール。特に「お客様還元」をキーワードにパケット利用の多いユーザー向けに「ウルトラパック」、ドコモケータイ利用者向けに「カケホーダイライトプラン(ケータイ)」を投入するなどプランを充実させた。通年で700億円の還元を実施する計画だったが、さらに11月からは子どものいる家庭向けのサービスを提供することで、通年で1100億円に拡大させる。
端末では低価格ながら高品質にこだわったというオリジナルスマートフォン「MONO」を投入するほか、下り最大682Mbpsの速度に対応するモバイルWi-Fiルーターも投入。LTE基地局は上期で14万9600局まで拡大。PREMIUM 4G対応基地局は3万8100局まで増加し、全国1240都市で提供を開始した。3.5GHz帯も使った下り最大370Mbpsのサービスは全国82都市で展開。256QAM技術を採用した下り最大500Mbps、さらに4×4MIMOを使った下り最大682Mbpsサービスも順次開始し、今後の5G通信に向けた技術開発や基盤整備も継続する。
コスト効率化も進展し、上期で430億円を削減。通期800億円の目標に向けて順調な進捗。吉澤社長は、今後さらにコスト効率化を進めて行く考えだ。
スマートライフ領域では上期で同44%増となる609億円となり、通期1200億円の目標に対して順調。コンテンツサービス、金融・決済サービスなどの5分野について、「(分野ごとに利益は)ばらつきがあるが、着実な利益成長が続いている」と吉澤社長。
好調なのはコンテンツサービスの「dマーケット」で、特に「dマガジン」などが成長を継続。契約数は1534万契約まで拡大。「あんしんパック」も1582万契約と順調に伸びた。金融・決済サービスではdカード契約数が1697万契約に達し、dカードGOLDも170万契約を突破した。今後、dカードプリペイドを提供することに加え、10月25日から開始したApple Payサービスによってさらなる利用者の拡大を図る。
パートナーとの協業による「+d」に関しては、パートナー数が164に拡大。ドローンを活用し、自治体などと協力した事業やAIやIoTを使った取り組みなどの新たな事業もスタートしており、今後も注力していく考えだ。
好調な業績を背景に通期目標を上方修正。営業利益は当初予想の9100億円(償却方法の変更などによる影響を除いて8600億円)を9400億円(同8800億円)に、純利益を6400億円を6550億円に、フリーキャッシュフローを6000億円から6400億円に修正。さらにコスト効率化も1000億円のマイナスに拡大させる。
ドコモは中期目標を1年前倒しで進めており「達成はほぼ見込める」ことから、当初予定の最終年度だった来年度に新たな目標を設定する計画。正式な発表は期末決算に行われるが、吉澤社長は「サービスの創造進化。+dの推進、あらゆる基盤の強化の取り組みを通して、ドコモが変わる姿を見せたい」と意気込みを表明した。
顧客還元の新たな施策として提供される「ドコモ 子育て応援プログラム」は、小学校卒業まで子どもの誕生月に毎年dポイントを3000ポイントプレゼントするほか、月額400円の「クラウド容量オプション(50GB)」の無料提供(小学校卒業まで)、月額280円で毎月フォトブック1冊を作成できる「フォトコレクションプラス」を13ヵ月間無料で提供する。
また、パケホーダイ加入者が月額500円で「キッズケータイプラス」が利用できるようになるサービスも提供。NPO法人ひまわりの会と共同開発した「母子健康手帳アプリ」も提供する。なお、母子健康手帳アプリはキャリアフリーで提供され、ドコモユーザー以外も利用可能だ。
今後も子育て応援メニューは拡充する計画。ドコモは「家族」をターゲットにした還元を継続して拡大していく計画で、「ターゲットを絞って提供することで、ほかのキャリアとの差異化にもなる」と吉澤社長はしている。