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ソフトベンダーTAKERU 30周年 レトロPC/ゲームを振り返る 第1回

30年前に一世を風靡した『TAKERU』はこんなにスゴかった!

2016年10月25日 11時00分更新

文● 宮里圭介

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現存するTAKERUの内部に迫る!

 TAKERUの時代を先取りしたかのようなシステムは、どのようなハードで実現されていたのだろうか。その内部を少し見てみよう。

 機能を大きく分けると、ソフトをダウンロードして保存しておく記憶部、メディアを書き込むドライブ、メディアをストックしておく倉庫、メニューを表示するモニター、お金の認識ユニット、マニュアルを印刷するプリンター、そしてこれらを制御するコントローラーで構成されている。

 この中でとくに気になるのが、記憶部だ。実はソフトの多くは記憶部のHDDに保存されており、そこにないソフトだけがダウンロードされる仕組み。毎回ダウンロードしていては通信速度がネックになるし、何より、通信費がかかりすぎてしまうからだ。通信用の回線は当初専用回線を使っていたが、コストが高くなってしまうため、加入回線へと変更。また、3代目からはISDNへと変更することで、低コストと通信速度の向上を実現した。

 コントローラーとして使われていたCPUボードは自社製で、2代目までのCPUはV30だったが、3代目ではi386SXへと大きくパワーアップした。また、メディアやケースをストックしておく機構部分は機械を得意とする同社らしく、精巧な作り。実はドライブとメディアをストックしておける部分は拡張でき、最大4台まで接続できたそうだ。

 もうひとつ重要な部分が、メディアを書き込むドライブだ。当時でもすでにソフトの不正コピーが問題になっていたものの、依然として不正コピーが多かった時代。それだけに、コピープロテクト技術はメーカーからソフトを提供してもらうために必須のものだった。ブラザーではFDDのコントローラーとソフトを独自に作り上げ、TAKERUに搭載。回転数までコントロール可能だったので、コピーソフトでも簡単にコピーできない強固なプロテクトがかけられたのだ。

TAKERU時代のPC環境ってどうだったの?

 今のような互換性はなく、メーカーごとに独自規格のPCを作っていたのが、TAKERUの活躍した'90年前後のPC環境。NECのPC-8801やPC-9801、共通規格のMSX2+、シャープのX68000、富士通のFM-TOWNSなど、個性的なPCが数多く登場した時代だ。

初代PC-9801。この頃のPCを所有していた人でTAKERUを知らない人はおそらくいないハズだ

月刊アスキー別冊『蘇るPC-9801伝説 永久保存版』(2004年発売)にもTAKERUが特集されていた

 ソフトはパッケージ販売が主流で、同じタイトルでも対応機種ごとに別のパッケージで並んでいるという状況。当時でもすでにソフトレンタルは違法だったが、レンタルではないというために、「当日中であれば販売価格の9割りで買い取る」といった買い取り保証を付けた中古ソフト販売という、限りなく黒に近いグレーな営業をしているショップもあった。のちにこれもレンタルとみなされ消えてゆくが、そんな時代にしっかりとしたダウンロード販売を確立していたTAKERUは、かなり時代の先を行っていたといえるだろう。

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