「10月7日のCEATECに来た方には“超いいこと”が……」とさくら・江草氏
発表直前β版もチラ見せ!「さくらのIoT」ユーザーのLT大会
2016年10月04日 07時00分更新
10月1日、さくらインターネットが「さくらの夕べ IoT特別編!~さくらのIoT Platform αライトニングトーク会~」を開催した。現在提供中のα版ユーザー15名ほどが集まりライトニングトークを繰り広げたほか、さくらからは10月5日に発表するβ版の情報が特別に“チラ見せ”された。
小型化/省電力化し、量産化にも対応した「β版IoT通信モジュール」を披露
イベントではまず、さくらインターネット IoT事業推進室 室長の山口亮介氏と同 執行役員 技術本部副本部長の江草陽太氏から、今年2月から提供してきたα版の「これまで」と、β版リリース後の「これから」が説明された。
さくらのIoT Platformの特徴は、データセンター側のデータプラットフォームだけでなく、データの送信手段(3G/LTE IoT無線通信モジュール)や安全な通信経路(閉域網接続)までをパッケージ化して一括提供する点だ。一方で、通信モジュールの備えるインタフェース(I2CやSPIなど)、IoT Platformの備えるインタフェース(Web Socket、API)は、いずれも汎用的なものとなっている。
こうして、IoTプラットフォームにおける“欠けたピース”をさくらがカバーすることで、ユーザーは「モノづくり/組み込みシステムの世界」と「Webサービス/ITの世界」とを簡単かつ安全につなげるようになる。α版サービスでは、すでに数百個のモジュールがユーザーに配布されており、さまざまな用途で開発や実証実験(PoC)が進んでいる。
10月5日に発表されるβ版(正式名称は「さくらのIoT Platform β」)においては、新たにマイコン(MCU)へのファイル配信機能や現在時刻の提供機能、タイムスタンプが付与された過去データの送信機能など、幾つかの機能追加や仕様変更があるという。
そしてIoT通信モジュールそのものも、β版への移行に伴って大きく進化する。同日の参加者には「写真撮影は不可」という条件付きでβ版モジュールが回覧された。手に取った印象をα版モジュールと比較すると、厚みは半分程度、重さも半分程度になっている。さらに、IoTデバイスに組み込むうえで大きな課題となる消費電力も、大幅に削減されるという。また、基板設計が両面実装から片面実装に変更され、量産化=低コスト化に対応した。
「田中(社長)からずっと言われてきたのが、『通信モジュールにクラウドや通信のサービスまで付けて1万円以下にしろ』ということ。モノづくりに詳しい皆さんなら、このコストがいかに厳しいかおわかりいただけると思う。今日は詳しくお話しできないものの、一言だけ言えば、その要件はクリアできている」(山口氏)
そのほかIoT Platform β版の発表時には、同プラットフォームの新たなクラウドパートナーや、国内の某テーマパークにおける実証実験についても同時に発表する予定だという。なお江草氏は、幕張メッセで開催されるCEATECの同社講演(10月7日 16時~「さくらのIoT Platform β 徹底解剖!」)では「来場した方限定で『いいこと』がある」と述べ、ユーザーの参加を呼びかけた。
さくらのIoTがあったからこそ夢が実現した、tsumugの「Sharing Key」
続いて、さくらのIoT Platformを利用してスマートロック「Sharing Key」を開発中のスタートアップ、tsumug(ツムグ)のCEOである牧田恵里氏がゲスト登壇した。tsumugのSharing Keyは「BtoB向け、完全に不動産業界に特化したスマートロック」として開発が進められている。
しかし、昨年12月のtsumug立ち上げ後、試作開発を開始して直面したのは通信モジュールの問題だった。tsumugの考えるスマートロックはデバイス単体で3G/LTE通信できなければならないが、当時入手できた3G/LTE通信モジュールは1個あたり2万5000円もするもので、とてもデバイスの量産化は考えられなかった。スマートロックを開発する他のスタートアップに話を聞いても、コストや消費電力などの問題から3G/LTE通信への対応を諦めていたという。
しかし、ちょうどその直後にさくらのIoT Platformが発表された。牧田氏は、この時点ではまだこのプラットフォームで何ができるのかはわからなかったものの、「これで量産化ができるかもしれない」という手応えを感じることができたと振り返る。
その後、tsumugでは試作開発を続け、現在はついに量産開発に進もうとしているという。牧田氏は「さくらIoTのα版では、まだ量産化まではイメージしづらかった。β版の登場で、Sharing Keyの量産化にもはずみが付くのでは」と期待を語る。
「さくらのIoTが、低コストな通信モジュールやサーバー運用を実現してくれたことで、『スタートアップが鍵を作ることもできるのでは』と夢を見ることができた。さらに、閉域網接続によってセキュリティが担保されていることで、大手企業や量産工場の協力も得やすくなり、今では量産開発も夢ではなくなった」(牧田氏)
現在は不動産業向けスマートロックの量産開発に全力を注ぐtsumugだが、最終的な目標はスマートロックメーカーになることではないと、牧田氏は語る。これから発展が期待される「シェアリングエコノミー」を加速させていくデバイス、サービスの開発こそが大きな目標であり、今回のスマートロックはその第一歩にすぎない。牧田氏は、さくらがIoT Platformというインフラを提供してくれることで、tsumugはさらに別の領域に製品/サービスを拡大し、“最高のユーザー体験”を実現するWeb開発に注力できるはずだと締めくくった。