日本のITを変える「AWS侍」に聞く 第22回
2週間に1度のペースで勉強し続けるモチベーションとは?
運用でカバーの波田野さんが現場で得た経験則とCLI支部への思い
2016年07月21日 07時00分更新
コミュニティがあれば会社にいる理由はない
次にコミュニティとの関わりについて聞いてみよう。波田野さんは、JAWS-UG以前からコミュニティ活動には深く携わっていた。「東京めたりっく通信時代は『BUG』というBSD系の技術コミュニティで入っていきなり旗振り役をやらされたので、けっこう鍛えられた」と語る波田野さん。その後、日本UNIXユーザー会やInternet Weekなどにも関わったおかげで、わらしべ長者的に顔見知りが増えたという。
コミュニティに行くと新しいことを学べ、次のステージへのヒントをもらえる。呑みに行くと、エンジニア同士でつねに新しい情報を得られる。しかも、クラウド提供企業の社長でも、Linuxのカーネルを直接触れられるエンジニアでも、まだ経験の浅いエンジニアでも、モチベーションと節度があれば上下関係なくコミュニケーションできる。
「基本的に会社の呑み会が苦手な人だった。呑み会に行っても人の噂とか、飲み屋のお姉ちゃんの話が循環しているだけ。そんな呑み会に行くくらいだったらコミュニティに行く。コミュニティは会社内と比較して相手との距離感が近いので、得られるものの量も質もまったく異なる」(波田野さん)
こうしたコミュニティの存在は波田野さんに対して「会社で働く」とは異なる価値観を与えてくれた。「モノ、人、情報のうち、クラウドがあれば、まずモノは手に入る。JAWS-UGをはじめとしたコミュニティがあれば、人と情報も手に入る。だから、自助努力とコミュニティへのギブ&テイクをちゃんとできていれば会社にいる理由はないし、1人でやっていても食べていけるようになっていく可能性が高い。もし1人でやっていくのが難しいとしても、その人に合うステージはいくらでもあるはず。少し無責任だと自覚しつつも、優秀な人が会社で疲弊しているのを見ていると、早く辞めちゃいなよって、いつも言ってる」と波田野さんは語る。
「CLIを学びたい」と「Co-Edoがあるから」生まれたCLI専門支部
そして、「引っ張ってくれる人がいたんだから、自分も引っ張る立場になりたいな」(波田野さん)ということでJAWS-UG初の専門支部として立ち上げたのが、JAWS-UG CLI専門支部だ。AWS Summit 2014の開催時に設立が発表され、2014年7月に初回が行なわれて以降、今年7月21日の時点ですでに57回の勉強会を開催している。50以上あるJAWS-UGの支部の中で突出してアクティブな支部だ。
設立のきっかけはシンプルで、波田野さん自身がAWS CLIを学びたいという理由だ。「学びたいといっても、いつかやろうで進まない。だから先に宣言して、締め切りドリブンで逃げようのない状態を作ろうと思った」という思想が設立の背景にある。コアメンバーを置かず、支部長制をひいているのもその一因。「貢献のモチベーションが下がるとコミュニティは崩壊してしまうので、基本的には主催者がやりたいことで回している」と波田野さんは語る。
そして、もう1つ大きいのは、いつも会場に使っているコワーキングスペース「Co-Edo」の存在だ。「開催する時に一番のネックは会場費の負担。会場借りても人数少なかったら、完全に赤字になってしまう。その点、CLI支部ではCo-Edoのドロップイン料金だけを参加者に払ってもらえばいいので、会場費のリスクがない」と波田野さんは語る。CLI支部のように2週間に1度勉強会を開催するような支部の場合、会場を探して渡り歩くのは難しい。その点、Co-Edoは確実に場所を抑えられ、駅からも近い。「Co-Edoさんがなかったら、今の活動は難しかった。ハコの確保は大きい」と波田野さんは述懐する。
今まで続けてこられたのも、CLIを学ぶという目的が明確になってたからだ。そして、「今のAWSのスピードだと、手が止まった瞬間に置いて行かれる。学び続けないと、自分の知識が陳腐化してしまう」(波田野さん)という危機感が、勉強会を続けるモチベーションになっているようだ。実際、2週間に1回のペースで勉強会をやっても入門編が終わらず、今も次々と新しいサービスがどんどんリリースされている状態。「まさか2年も入門編やるとは思わなかった(笑)」(波田野さん)とのこと。新サービスに追われ続けるというクラウドのスピード感を物語るエピソードだ。
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