「ユーザーの要望に応え、喜んでもらえるのがこちらも一番うれしい」
プレスイベントの後、ホテルのラウンジに場所を移して、インタビューに応じてもらった。質疑応答では聞けなかった質問をまとめてぶつけてみる。
Vivaldi 1.1が公開されたが何が変わった? という質問には
「大きな機能追加などはない。タブ周りの挙動を主にアップデートしている。例えば、タブスタックにあるウェブページを閲覧していて、タブを新しく開いたときにスタックの「中に開く」のか「外に開く」のかを選べる。また、タブを閉じたときに履歴上「最後にアクティブだったタブ」に移動するのか、物理的に「隣に移動する」のかを選べるようになっている」
とのこと。タブ機能の充実は筆者が一番欲しかったところなので、うれしいところ。しかし、今でも「このタブから左(もしくは右)を全部閉じる」という機能がないが、順次搭載されるとのこと。
開発で苦労したのは、最初に方向性を決めることだったと言う。例えば、HTMLやCSS、JavaScryptといったウェブテクノロジーで全部作るという判断。どういったライブラリを使うのか、という選択もあったそうだ。
また、Vivaldiのベースになっている「Chromium」の拡張機能をウェブテクノロジーのインターフェース上に載せるのは、概念的には難しくないが、やってみると複雑でかなり時間を要したと言う。
開発で楽しかったのは、ユーザーが革新的な新機能を受け入れてくれた時や、要望に対応したときにお礼を言ってくれることだったそう。どこまで行っても、Vivaldi開発陣はユーザーの方を向いているのが凄い。
CEOのテッちゃんという愛称についても聞いてみたが、いつ頃からそう呼ばれていたのかわからないという。Operaの時代にもユーザーと交流するために日本に来ていたのだが、2007年ごろからテッちゃんという愛称で呼ばれるようになったようだ。親しみを持って呼んでもらえるということは光栄だ、と仰っていたので遠慮なしに呼ばせてもらうことにした。
「メール」と「同期」機能の実装に期待!
次に、今後搭載される機能について質問したところ、順次開発していく、というテンプレートが返ってきたので食い下がったところ、丁寧に説明された。
「いつどういう機能がリリースできるかというのは言えない。我々は常にイノベーションを起こそうとしている開発スタイルなので、もしかしたら明日開発者の一人が考えた機能が来週のビルドに入るかもしれない。プライオリティとしては低くても、作業が簡単な機能はさくっと入れたりしている。ユーザーのフィードバックを見て速攻で対応したりするし、イノベーションというのは計画するのではなく、自然に起きるものだと考えているので、言わないわけではなく言えない」とのこと。
他のブラウザーに入っていない機能をどんどん入れていく、というのが会社の姿勢だと言う。現在、リリースすることがわかっているのは「メール」と「同期」機能だ。これはプライオリティが高いうえ、開発にも時間がかかるのでリソースを投入しているようだ。なお、メールに関しては少し話を聞くことができた。
Operaには「M2」と呼ばれるメール機能が搭載されていたことがある。Vivaldiはそのユーザーが満足するような機能を目指しているという。想定しているのは、複数のメールアカウントに大量のメールが届くユーザーだという。まさに筆者がそうなので、待ち遠しいところ。なお、メール機能を「M3」と呼んでいたがこれは内輪ネタで、おそらくは「Vivaldi Mail」といった名称になるだろう。
同席していた編集担当が「近い将来、フィルタリングにはディープラーニングや機械学習などAIを活用するのか?」と聞いたところ、「Good Question」としながらも、「No」という回答。ユーザビリティとして、予測可能性は重要というスタンスのようだ。つまり、誤判定して必要なメールを迷惑メールに判断すると、ユーザーのフラストレーションが高まってしまうということ。
それならば、ユーザーからの提案で「こういうメールはこういう風にフィルタリングして欲しい」というような対話でやっていくほうが、より多くの人を満足させられると考えているようだ。なお、メール機能も、Vivaldiブラウザーと同様、ディープな機能を揃えるスタンスで、期待できる。
今後のアップデートは、ハイペースで進むようだ。Chromiumは6週間ごとにアップデートされるが、Vivaldiも最低限同じタイミングでアップデートしていく予定。もちろん、それよりも早くすることもあるという。そのたびに、「1.○」の小数点一桁の数字が上がっていく。メールのような大きな機能を搭載したときは、「2.0」とメジャーバージョンアップとなるようだ。
ありし日のOperaと同様、ユーザーとの距離が近いVivaldi
インタビューの後、五反田のトレタ社オフィスでユーザーミートアップイベントが開催された。もちろん、筆者もヘビーユーザーということで参加させてもらった。おしゃれなスペースで、食べ放題飲み放題の素晴らしいイベントであった。
開会からしばらく経って会場が暖まってきた頃、ユーザーによるライトニングトークが行われた。数人の旧OperaとVivaldiの愛好家が、スライドを使って数分のトークを行った。歴史を振り返ったり、要望を述べたり、冨田氏に取材したエピソードを話したり、いろいろ面白かった。
ユーザーの皆さん、やっぱりテッちゃんと冨田氏が大好きなようで、ずっと誰かが周りを囲んでいた。質疑応答ももちろん、盛り上がった。プレスイベントやインタビューで出なかった内容としては、メールの話があった。
Vivaldiの開発スタート時から、メール機能の開発に専属の人を付けて進めていたそうだ。1.0をリリースしてからはさらにリソースを増やしている。社内ではすでにVivaldiのメール機能を使っている人が多いそうだ。これは期待できそうなので、なる早のリリースを待ちたい。
とにかくユーザーとの距離感が近くて驚く。友だちか! というような感じだが、別に不快でもなさそうで、楽しそうにビールを飲みながら歓談しているのが印象的だった。
ヘビーユーザーのために、ユーザーを向いて、日々イノベーションを追い求めるVivaldi。筆者のメインブラウザーはすでに、ChromeからVivaldiに置き換わってしまった。このまま、どんどん進化していくことを期待したい。まだVivaldiに触れていない人には、是非試してみることをオススメする。