自分の知らないことがあると、すぐにググって知ったかぶりをしちゃう人っていますよね。いや、いいんですよ。自分の知らないことを秒速でググって、話題にキャッチアップする。僕もテレビ番組で初めての出演者と会うときなど、マネージャーがネット検索してプリントアウトしてくれた資料が番組台本に添付されていて、かなり重宝しています。
ツーワード検索の増加
Googleが発表した2015年の検索の総合ランキングを見ると、いずれも、ブックマークに入れておくようなサイト。
おそらく「ネコ YouTube」「デジカメ amazon」のように、2つの単語による検索によってランクアップした結果でしょう。
パワーユーザーであれば当たり前の複合検索法が、スマホなどのライトユーザーに浸透してきたこと。ブックマークから「ショッピングサイト」などにアクセスし、目的の単語(商品名など)を入力するワークフローではなく、ブラウザーの検索窓にワードと検索先を同時に入力することで検索ステップを省略しています。つまり、検索結果までの時間短縮だけでなく、膨大なページ群から、よりピンポイントなソース指定の検索に移り変わっていることが見て取れます。
具体的に言えば、「デジカメ」で検索して、怪しいショッピングサイトにアクセスしてお金や時間をムダにするより、楽天、アマゾンのように購入先を指定することのほうが速くて安全というわけです。
2位にランキングされているYahooは、ショッピングとニュース検索の数が加わった結果だと筆者は推測しています。つまり、週刊誌的、テレビ的なニュースザッピングに使われているのでしょう。これはYahooがニュースキュレーターとして一定の評価をユーザーから得ていて、トレンド記事へのスピードや感度、政治、芸能など、ジャンルバランスが良さからと筆者は分析しています。
検索アルゴリズムは「正確なコンテンツ」と「人気コンテンツ」の区別がつかない
ただし、検索結果を信用して、誰かに話してしまうのは、注意が必要です。問題は検索結果の情報(いわゆるソース)の正確性。それを判断できないと、偽情報を信用したり、デマを流通させてしまうことに…。検索順位を決めるアルゴリズムは「正確なコンテンツ」と「人気コンテンツ」の区別がつきません。ですから、検索の上位にあるからといって、それが正しい情報だとは限らないからです。
さらに問題を複雑にしているのが、情報の複製(つまり、コピペや伝聞)によるサイト。分かりやすい例をあげれば、「登山をしたことがない人」が書いた「登山のノウハウ」なんて危なくてしょうがない(笑)。これも、正確な情報のコピペなら良いんでしょうが、人が調べたことを自分が調べたように投稿しちゃう人って精査も曖昧。内容が微妙にずれちゃったり、肝心なことが抜けたりしています。
2008年ごろから日本で、トイレットペーパーの端を3角に折ることをアメリカの消防士が使ったことから「ファイヤーホールド」と呼ばれる…、なんて話がネットで散見しました。しかし、今はデマであったことが多くの人に検証されています。これは、情報を誰も検証しないでコピペや口コミが広まった例でもあります。しかし、Yahoo.com(アメリカ版ヤフー)とかで「fire fold」で検索すればすぐに真偽が分かりそうなものですが…。
検索のリスクを避ける
ハードエビデンスか、ソフトエビデンスか?
とはいっても、使い方さえ誤らなければ、ネット検索は便利なもの。じゃあ、偽情報に翻弄されないためにはどうしたらいいのでしょうか。筆者が気をつけているのは、以下の3つのポイントです。
●自分の都合で情報を曲げていないか?
誰かや何かを否定するための情報や自分のルサンチマンを満足させるため情報を人は探しがち。人工よりも天然のほうが素晴らしいと信じていたり、〇〇はガンを予防するなんて話も大好きです。アンケートなどもそうですが、自分にとって都合いい意見だけを集計してばかりでは、信憑性は限りなくゼロになります。
●参照しているのは、1次情報か2次情報か?
ゴシップ記事によく登場する「事情通の関係者によると…」ってフレーズと同じで、発言者不明、出典不明の情報は注意が必要です。メディアでも「~と報道されました」なんて紹介されることもありますが、大切なのはその検証や真偽。トイレットペーパーの折り方のような世間話ならまだしも、お金や健康に関わることになれば、偽情報による被害も深刻です。
●ロジックはつながっているか?
良心的な執筆者による投稿は、情報をニュートラルに書こうとします。つまり、それがウワサなのか、真実なのか、自分の感想や習慣、妄想なのかが明確に書かれています。そうした起承転結というか、理路整然さが信用に値するサイト。
たまに「アインシュタインの相対性理論は間違っている」なんて言っちゃう人が登場しますが、時間経過とともに多くの科学者に追試され、日々正しいことが証明されていることに考えが及んでいません。時間が経ち、多くの人に検証された資料だからこそのハードエビデンス(確固たる証拠)なのです。そんな想像力もロジックのひとつです。
もちろん、そうしたハードエビデンスも含め、2~3の別のソースで確認すれば、誰かに話しても恥をかかないですみます。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
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