Ubuntuはスマートフォンありきではなく
コンバージェンスの一環
2013年に名乗りを上げたモバイルOSは上記のFirefox OS、Sailfish OSのほか、Ubuntu、Tizenがあった。Tizenは一足早くIoT向けに軸足を移しているが、残るUbuntuが今年は一番元気だった。
Ubuntuは今年、端末メーカーがブースを出すホール3に移り、シンボルカラーのオレンジでブースを飾った。直前にMeizuが最新の端末「Pro5」を発表しており、BQからはやはり2月に「BQ Aquaris M10 Ubuntu Edition」が発表されている。主要端末メーカーが集まるホール3にやってきたことについては、「我々の強いメッセージ」(Ubuntuの広報担当)とのこと。
UbuntuはIoT向けにも「Snappy Ubuntu Core」を持ち、これを搭載したドローンやロボットも展示していた。Ubuntuが他と異なる点は、スマートフォンOSを作ろうと思って参入したのではなく、創業者のMark Shuttleworth氏がずっと描いてきた”コンバージェンス”と呼ぶ戦略の一環である点だ。
実際に、Canonicalはモバイル向けとデスクトップ向けのUIを将来融合する計画であり、今年のブースもスマートフォンやタブレットなどの”モバイル”だけを押し出すのではなく、テーマも「Phone+Open Stack(Ubuntuが参加するオープンソースのクラウド基盤)+NFV(ネットワーク機能の仮想化)+IoT」だ。
モバイル端末だけでなく、SDNやNFVなどテレコム側のクラウド技術を見せ、IoTも見せるという展示内容だった(Ubuntuがデスクトップ、サーバーとずっと戦ってきたMicrosoftも「Windows 10」で同じような戦略となっている)。
ここ数年を振り返るに、誰もAndroidの勢いを止めることができなかったのが不思議な感じがする。業界の勢いはとんでもなく速かったが、6年以上前にマーケティングの「キャズム理論」で知られるGeoffrey Moore氏が2010年にSymbianのイベントで予言したことがかなり当たっている気がする。他サイトに書いた記事だが、AndroidはMoore氏のアドバイスとして話されたことのいくつかを実行したのだと思う。
とはいえ、Ubuntu以外のモバイルOSが活動を停止したわけではなく、Firefox OSやTizenもIoT向けという別の形で存続していることは間違いない。なんらかの機会で取材ができることを期待したい。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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