歓迎すべきスマートフォンのサポート
一方、歓迎すべき変化も見えてきた。スマートフォンのサポートだ。国税庁は2013年6月から「e-Taxソフト(SP版)」を開始、一部機能/手続きについてスマートフォンの利用を可能としている。対応OSはiOS 6以降とAndroid 4以降、いずれも標準装備のウェブブラウザ以外は動作対象外だが、e-Taxの利用可能時間内(月~金曜の8時30分から24時、1月12日から3月15日の期間はメンテナンス時を除き24時間利用可能)であればサービスを利用できる。
利用できる機能だが、利用者情報の登録・確認・変更、納税、メッセージボックスの確認、還付金処理状況の確認のみとなる。納付情報登録と納税証明書の交付請求(署名省略分)以外の各種手続きは、引き続きPC(Macの場合WEB版)を利用するしかないが、個人の確定申告書作成程度はSP版で完結できる。つまり、転退職や副業に関連する程度の確定申告であれば、iPhoneがあれば足りる時代となったのだ。
なお、e-Taxソフト(SP版)の機能を利用するためには、事前にルート証明書のインストールが必要になる。ログインするときには利用者識別番号が必要になるため、開始届出書の提出など確定申告に必要な事前準備そのものは大きく変わらない。
最新OSでは先へ進めない!?
iOSの対応バージョンは「6.0から8.4」
留意すべきは、e-Taxソフト(SP版)で推奨環境とされるiOSのバージョンが「6.0から8.4」であることだ。一般的な感覚でいうと、後継バージョンであるiOS 9、そのマイナーバージョンアップであるiOS 9.2のSafariも利用できそうなものだが、動作確認が行なわれ”サポートされる”のはあくまでiOS 6.0~8.4。iOS 9.2は推奨環境に掲載されていないため、原則として”サポートされない”と考えたほうがいい。
実際、予感は的中した。iOS 9.2のSafariでもログインや情報登録は滞りなく進めることができたが、肝心の確定申告にまつわるデータ入力画面でスクロール不能となる事象が発生し、次ステップへ進めなくなった。一方、iOS 8.4のSafariではそのような現象は発生しない。
この問題は、iOS 9のSafariにおける仕様変更(コードは確認できないがiframeおよびCSSが原因?)と推測されるが、いずれにせよ9月公開のiOS 9にはキャッチアップできていないことを意味する。関係者にしてみれば、たった3ヵ月で対応できるかという話もあるだろうが、iOSはこれまでも約1年おきにアップデートしてきたという経緯がある。公開後すぐにユーザーの大半がアップデートすることが知られたシステムであり、それがセキュリティ向上にも貢献しているという事実を踏まえれば、硬直的な対応とのそしりを受けても仕方ないのではないか。
役所が商用製品のリリースサイクルにどこまで付き合うかという話ではあるが、推奨環境を利用しているiOSユーザーはすでに少数派となりつつある。せっかく税金を投入して立ち上げたサービスであるだけに、惜しまれてならない。
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