10月1日にサービスをスタートしたMVNOサービス「LEQUIOS mobile(レキモ)」。MVNOサービスは、一大ブームといっていいくらい、乱立している状況だが、LEQUIOS mobileは通常のMVNOが主に東京から全国展開しているのとは逆に、「沖縄」をベースとして全国へもサービス展開している。
そこで、今回はLEQUIOS mobileを提供しているレキオス代表取締役の宜保文雄氏に、MVNO事業参入の狙いなど話を聞いた。
レキオスの事業は家賃保証からスタート
──それではまず、レキオスとはどんな会社なのか教えてもらえますか?
宜保氏:レキオス自体は創業から約30年経っている企業です。弊社の事業内容は社会課題解決業。社会課題の解決にチャレンジしていく、というのが事業内容になります。地域の企業であったり、地域に住んでいる人々が快適、安全に暮らしていける環境を整えるということが目標です。この目標を達成するために、実は業種業態に縛られずに活動をしています。
宜保氏:スタート時の業務は家賃の滞納保証でした。自分が母子家庭ということもあり、部屋を借りるときになかなか保証人が立てられず、苦労した経験があったからです。不動産会社は、母子家庭であったり高齢者などにあまり部屋を貸したがらない。家賃滞納だけでなく、火の不始末や近隣とのトラブルなどに対応できるのかどうか不安なんです。
そういった不動産会社の不安を取り除いて、母子家庭や高齢者でも部屋を借りやすくしようということで、保険業務をはじめたり、24時間体制のコールセンターといった業務も行なっています。現在ではこのコールセンター業務も大きくなっていて、沖縄地区でも約8万世帯の対応をしています。
──不動産業からなぜ通信事業に?
宜保氏:その後、自分たちでもアパートやマンションを建てるデベロッパー業も始めました。その時に、電気、水道、ガスなどと同じようにインターネット回線も生活に必要なインフラだと考えて、「LEQUIOS BB」という光回線のISP業務も始めたわけです。
残念ながら沖縄は全国的に見ても所得水準が低いのが現状です。子どもの教育に費用がかけられない家庭も多く、これでは格差が生まれてしまいます。そこで、レキオス関連の不動産に入居できれば、インターネットだけでも無料で接続できればこういった格差を無くすことができるのではと考えています。
現在は申し込みベースで3万世帯、利用世帯では1万7000弱の世帯がLEQUIOS BBを利用しています。
本来必要な人たちに低価格のモバイル通信を提供
──ISPからMVNOにも拡大するのは自然の流れだったんですね。
宜保氏:このLEQUIOS BBが、LEQUIOS mobileのベースとなっています。というのも近年、家計の中で占めるケータイ料金の割合が大きくなっています。スマートフォンやタブレットが通信機器のメインとなって、モバイル通信も公共インフラと同じだと考えると、やはりこれも低価格で提供したいと考えたわけです。
──なるほど。それでは、LEQUIOS mobileはどのようなサービスを展開しているのでしょうか?
宜保氏:LEQUIOS mobileをスタートさせるにあたって、重要視したのが実店舗でサービスを行なうことです。本来いちばん気にしなければならない層に価格の損得といった情報が届かないことがあるので、実店舗を用意して、顔を合わせて手取り足取り必要な情報を提供してケアしていこうというわけです。
実際、来店者の9割は「APNってなに?」という人が多く、実店舗での対面サービスは大正解だったと思います。現在は1店舗だけですが、今後は沖縄地方の主要都市をメインに8~10店舗のオープンを計画しています。
宜保氏:ただ、レキオスがMVNO事業や実店舗を展開できるのは、事業として単体ではみていないからなんです。実店舗のコストをMVNOの事業だけでまかなおうとしているわけではありません。テレビCMなども含めて、レキオス全体の事業トータルでみています。
たとえば、LEQUIOS mobileのサポートも、先ほど説明した不動産関連のサポート体制がもともとあります。すでに弊社で持っているインフラを活用することで、MVNO事業を展開しています。MVNO単体で行なうのはちょっとキビシイかなと思います。
実店舗も、MVNOサービスを提供するだけでなく、弊社の各種業務と組み合わせて。コミュニティーセンター的な役割になればいいなと思います。
スタート直前から沖縄地方で放送されたレキオスモバイルのテレビCM。
想定以上に申し込みが殺到
──10月1日からサービスインしていますが、反響はいかがですか?
宜保氏:想定外に反響が大きくて。当初は1ヵ月で200件くらいの問い合わせがあればいいかなと思っていましたが、1ヵ月たたないうちに1000件を超える勢いでした。ユーザー層も、リテラシーの高い人が集まるかと思っていましたが、中学生が家族と来て初めてスマホデビューするとか、60代から70代のシニア層まで幅広く、弊社でもそういうイメージ展開をしていましたが、新しいケータイ会社ができたという印象を持っていただいているようです。
また、2台持ち用の需要が多いかなとも想定していましたが、MNPで移ってこられるユーザーも多くて、MVNOサービスでも意外と抵抗はないんだなと感じています。
──やはり、実店舗に来ての申し込みが多いんですね。
宜保氏:ウェブサイトからの申し込みも可能ですが、全体の3割といったところです。さらに2割は県外、それも北海道の紋別からの申し込みもありました。県内の申し込みがほとんどだろうと思っていたので、これも想定外でした。ある意味、東京発でないMVNO事業を始めても大丈夫なんだと安心しました。
──ちなみに回線はどのキャリアでしょうか?
宜保氏:回線はフリービット(ドコモ網)の帯域を利用していますが、会員用のウェブサイトなどシステムは独自のものとなっています。LEQUIOS mobileでは、データと端末のセット販売も行なっていて、これが好評です。子供用に通話は家族だけなので、LINEなどのアプリでコミュニケーションがとれれば問題ないと、データプランだけで端末とセット購入されるかたが多いようです。
──データ通信プランについて教えてください。
宜保氏:データ通信プランは、1GB単位で5GBまで従量課金となる「5STEPプラン」と、1GB、3GB、5GB、使い放題の4つから選択する「LTE定額プラン」の大きく分けて2種類を用意しました。初めてスマホを持つ人は、使わないときは低価格になる5STEPプランが人気です。逆に2台持ちなど、リテラシーの高いユーザーはLTE定額プランの使い放題を選んで、ガンガン使っているようです。
──それではスマホのラインナップはいかがでしょう?
宜保氏:端末はできるだけ幅広く扱っていて、低価格モデルではFREETELのSAMURAI MIYABI、高級モデルではASUSのZenFone 2を用意しています。ZenFone 2もストレージが32GB、メモリーも4GBのハイエンドモデルを選びました。また、ユーザーの方から国産モデルの声も多かったので、富士通のarrows M02もラインナップに加えました。
今後はスマートマンション事業も展開し
LEQUIOS mobileを活用
──LEQUIOS mobileの今後の展開を教えてください。
宜保氏:沖縄は海外からの旅行者も多いので、インバウンド向けにプリペイドのSIMカード販売なども考えています。実は、LEQUIOS mobileの店舗の裏にDFSギャラリア沖縄(海外資本の免税店)があるので、なんの宣伝もしていないのですが、訪日外国人が「プリペイド! プリペイド!」とよく来店されるんです。これらの需要にも応えていきたいです。
また、スマートマンション事業も計画中で、スマートマンションにもモバイルを活用していきます。4月には入居できるように建設は着工していていますが、そこにLEQUIOS BBを導入して、家電や照明などもネットに接続。それをLEQUIOS mobileの端末でコントロールできるようにしようと考えています。
──ありがとうございました。
以上が沖縄発のMVNOサービス、LEQUIOS mobileである。数多くあるMVNOサービスのなかでも、地域密着MVNOという珍しい事業形態だが、これまでレキオスが沖縄で培ってきた事業実績や内容があってこそ成立しているといえる。
今後も日本各地に地元MVNOが登場するかは未知数だが、LEQUIOS mobileの成否がひとつの目安になりそうだ。
サービスに利用している回線について、当初本文内で事実誤認による間違いがありました。お詫びして修正いたします。(12月1日 12:00)