ミートボール、カレリア風パイ、シナモンロール
フィンランドおいしいもの、まずおすすめしたいのはミートボール。
日本だとスウェーデン企業IKEAのイメージが強いのだが、ミートボールはフィンランドの伝統的な家庭料理でもある。小さなハンバーグをつくってオーブンで焼き、ブラウンソースをかけて、マッシュポテトといただく感じ。カロリー? 何の話かな。今回は3店舗で食べてみたが、それぞれに味が違って面白かった。
とくにおもしろかったのは食堂TORIのミートボール。やや硬めで、香りのいいスパイスが利き、ボリュームたっぷり。つけあわせのリンゴンベリーソースにつけて食べると、お肉の味がひきたって、とってもおいしい。日本人の好きな“ふわふわ”タイプもあるのだが、こっちのほうがわたしは好きだった。
つづいて伝統食部門から、カレリア風パイ。
ちょっと見た目は地味だけど、朝ごはんにぴったり。ぱりっとしたライ麦の皮で、マッシュポテトかお米のおかゆを包んで焼いたもの。これにエッグバターをのせて食べるのがフィンランド流。もともとフィンランド北東部カレリア地方発祥なのでカレリア風と呼ばれている。
よく考えたら炭水化物の二重摂取だし、脂肪分たっぷりのエッグバターこれでもかとのせてるし、典型的な北国料理という感じもするけれど、おいしいので気にしない。ちなみにサーモンをのせてもおいしい。
最後はスイーツ、シナモンロール。
日本でもすっかりおなじみになった、シナモンをたっぷりきかせた菓子パン。向こうではくるくるとカールした形から「コルヴァプースティ」(つぶれた耳)と、変な名前でも呼ばれている。これまた店によって味が千差万別。
ヘルシンキの老舗カフェ・エクベリはほんのり甘みがあり、ふわふわ、もっちり日本人好み。エロマンガ(!)という有名店は濃厚でどっしり甘く、シナモンがしっかり利いていて、コーヒーが恋しくなる甘党向けの味。
そしてわたしが大好きになったのは、ヘルシンキ大聖堂の前にあるカフェ・エンゲル。甘くてもべたつかず、さくっとした歯ごたえが気持ちよく、シナモンがたっぷり香る、黄金比のシナモンロールだ。コーヒーとの相性も抜群。
次回また同じカフェを訪れることがあったら、今回と同じく朝8時の開店直後、新聞を広げる出勤間際のおじさんや、朝の散歩途中に立ち寄った奥さんたちにまぎれて頬張るのがいちばんよさそうだなと思っている。
「イギリス以下」の汚名は返上
それ以外に、トナカイ肉の煮込み、カレリア風シチュー、バルト海産ニシンのフライ、ノルウェー産サーモンのスモークなんかが最高。とくにスモークサーモンは素晴らしい。スモークサウナが普及したこともあり、燻製文化は発展の土台があったということなんじゃないかと通訳さんから聞いたこともある。
思わず長く書いてしまったけど、フィンランドは食文化も面白い国だ。
2005年、EUリーダーたちのさる国際会議で、フランスとイタリアの首脳が「大陸で一番まずい料理」について話し、「イギリスよりフィンランドだな」という意見で一致したという逸話もあるが、それも10年前の話。
たしかに、もともとフィンランドは、農業に適さない土地柄から、森の恵み、バルト海の恵みに頼ってきたところがあり、味つけもきわめてシンプルだったという。しかし、いまではミシュランガイドに掲載されるフィンランド料理店ができるほど“美食の国”へと進化をはじめているのだ。
出張や旅行でフィンランドを訪れるときは、かわいいもの、新しいものについで、おいしいものにも目をつけるのを忘れずに。サルミアッキを心からおいしいと言える日が来るかどうかはわからないけど……。