「シスコ、IBM、HP――彼らはFortune 500企業のためにある。ネットギアは、その残りの“Fortune 50億”のためのベンダーだ(笑)」。米ネットギアの会長兼CEOであるパトリック・ロー氏は、インタビュー中、笑顔を絶やさない人物だった。
手頃な価格と高いパフォーマンスの両立、秘訣は「ユニクロと同じ」
ネットギアは「全世界のすべての人々をインターネットでつなぐ」ことをミッションとして、1996年に設立された。「最もコストパフォーマンスの高い製品」と「最も使いやすい製品」を目標に掲げ、SMB(500名以下の企業)市場/家庭向け市場にネットワークスイッチや無線LANルーター、NASといった製品を展開している。エネルギッシュなロー氏は自信を隠さない。
「『一番プライスが安い』なら中国製や台湾製、『一番パフォーマンスがいい』ならシスコ製だ。でも、SMB向けや家庭向けの市場では、プライスもパフォーマンスも求められる。それらを両立させた製品では、ネットギアがナンバー1だ」
プライス、パフォーマンスが両立できる背景として、ロー氏はまず、SMB/家庭向けネットワークベンダーとしてシリコンバレーで開発を行っているのがネットギアだけであることを挙げた。これにより、競合に先んじて最新技術を製品に盛り込むことができる。ロー氏は、ギガビットスイッチや10ギガビットスイッチ、無線LANルーターなど、他社に先駆けて最新仕様の製品をリリースしてきたと振り返る。
さらに、20年前から製造拠点を中国に据え、その一方で販売はグローバルに展開して生産ボリュームを高めたことで、製造コストと製品価格の低減を図っている。「つまり、これはユニクロさんと同じ(笑)」。
ハードウェアとクラウドサービスのパッケージ化を進める
プライスとパフォーマンスを両立させた製品として、今年も、1万ドル以下のシャーシ型スイッチである「M6100」や、市場で最高密度の10G×28ポートスイッチ「XS728T」などを発表してきた。加えて、設置自由度の高いデザインの「クリックスイッチ」、乾電池駆動する無線IPカメラ「Arlo(アーロ)」(関連記事)など、ユニークな製品も投入している。
「USB充電ポート搭載モデルのクリックスイッチは、会議室などへの導入で人気が出ている。ミーティングをしながら充電ができるから(笑)。教室にあるすべてのスイッチ、1000台以上をこれに入れ替えた大学の事例もある。日本ではオフィスの“島ハブ”としても需要がある」
最近では、ハードウェアとクラウドサービスを組み合わせた製品も数多くリリースしている。たとえば前出のArlo、多拠点の無線LANアクセスポイントをクラウドで管理する「Business Central Wireless Manager(BCWM)」(関連記事)、ReadyNASの管理やモバイルアクセス手段を提供する「ReadyCLOUD」などがある。
「SMB向けのさまざまな製品を、すべて『クラウドイネーブル』にしていく(クラウドによる管理機能などを搭載していく)ことが目標。無線LAN、ストレージだけでなく、スイッチもその方針だ。モバイルアプリによる設定や管理も実現していきたい」
また、10Gスイッチのラインアップをさらに拡充していくだけでなく、来年には2.5G Ethernetのスイッチもリリース予定だと述べた。
日本市場のニーズとネットギアの方向性が合致、毎年高い成長率
同社がスイッチ製品などで対象とする企業規模も、500名以下規模のSMBから、現在では2000名程度のミッドエンタープライス規模まで拡大している。それでは日本市場についてはどう見ているのか。
「かつてはハイパフォーマンスのみを求めていた日本市場も、10年ほど前からはプライスとパフォーマンスの両方を求めるようになった。ネットギアが成長するための素地が整ったといえる。日本市場においては、ここ数年間、毎年20~30%程度の成長を遂げている」
今後も、プライスとパフォーマンスを両立した製品を提供し、日本市場での認知度もさらに高めていきたいとロー氏は語る。「そう、ユニクロのようにね」と、また笑った。