しんと静まりかえった夜のクラブで、ヘッドホンをつけた人々が、激しく首を振りながら踊っている。“サイレントディスコ”だ。ヘッドホンを着けることで音楽への没入感が高まり、音響設備がなくても踊れてしまうのが面白い。
もし、これをハイレゾでやったら──ソニーがそんなことを考えた。
渋谷sound museum VISIONで8日、ハイレゾ対応ヘッドホン「h.ear」、やっぱりハイレゾ対応のウォークマンを使ったサイレントディスコを開いたのだ。会場には200人の音楽好きが集まった。
ウォークマンをポケットにつっこんでお酒を注文するのはふしぎな気分だ。パーティーの開始を待つあいだに発見もあった。女の子がヘッドホンを首にかけたままカウンターにひじをつき、シャンディーガフを飲んでいる姿はさまになる。
まあ、いちばんさまになっていたのは、なぜか会場に呼ばれていた「iPhone行列にいつもいるモヒカンの人」ブッチさんかもしれないけど。
ところで、どうやって200人に同時にハイレゾ音源を聴かせるんだろう。ふしぎに思っていたら、ステージの上にあらわれたMCが「再生ボタンを押すカウントダウン」をスタートさせた。なるほど、そこはアナログなのね……。
ちょっと半笑いになったものの、いざ音楽が始まると世界が変わった。
体が震えるほどの音圧を感じるわけではないので物足りない部分はあるけれど、音がここまでくっきり聴こえるクラブというのはおもしろい。やがてパーティーに招待されたダンサーたちも、ヘッドホンをつけて踊りはじめた。
とりわけAYANO&YUIさん、KUCHIBILLさん、セクシーな女性に目が釘づけ。というかエロくてかっこいい。ヘッドホンで外の音が聞こえないぶん、よけいエロいのかもしれない。ソニーはハイレゾがエロいものだと教えてくれた。
ヴォーギング、ブレイクダンス、フリースタイルバスケ。曲が変わるたびダンサーが次々にあらわれ、ワーワーと騒いでいるうちに、34分間の短いディスコタイムはあっという間に終わってしまった。感想は一言、楽しかった。
若い子にもハイレゾを広めたい。ソニーはそう考えてイベントを開いたはず。
正直この話を聞いたときは、盛り上がるのかなあと疑っていたところもある。けれども実際行ってみるとサイレントディスコは楽しかったし、イベントとしては大成功だった。
きっと大切なのはエロいことだ。
エロとは究極の体験であり、体ごと没入したくなるもの。解像感と臨場感を高めるにはハイレゾが向いている。「ハイレゾはエロくてカッコいい」。このコンセプトが広まれば、若い子たちもきっとハイレゾの魅力に気づくはず。
とにもかくにも、ハイレゾサイレントディスコは面白い。ソニー協力のもと、もっといろんなお店でやってくれたら最高だ。つぎはアニソンハイレゾサイレントディスコを秋葉原MOGRAあたりでぜひ。