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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第4回

世界で見た、失敗のフォローのしかた

2015年09月29日 17時00分更新

文● 前田知洋

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失敗のフォロー その4
「相手に恥をかかせない」英国編

 アメリカ人と同じように「フェアか、アンフェアか」で判断をすることもある英国人。僕はロンドンで以下のような経験をしました。

 あるレストランでランチを食べているとき、革張りのソファとズボンが擦れて音がしました。その音はまるで、食事中にふさわしくない不謹慎なノイズのよう。僕の相手は女性だったこともあり、僕はあわてて「ソファが擦れて…」とシドロモドロの言い訳をしました。しかし、相手は「……。」と僕の釈明に納得いかない様子。「オナラじゃないの?」と疑っているわけです。

 そうしたら、隣の席の老紳士が「ここのソファは鳴るんじゃよ」と言わんばかりに、ソファに背中を擦らせて「プゥプゥ」と音を鳴らし、僕に助け舟を出してくれました。続いて向かいに座る老婦人も同じように音を鳴らし、こちらを向いてニコニコしています。ノイズが響くレストランで、ウェイターは苦笑いしていましたが…。

 こんなふうに誰かが失敗をしても、その人が恥をかかないように他人がフォローしている。さすがは紳士の国であること実感しました。僕がラッキーだっただけかもしれませんが…。

失敗のフォロー その5
「仲間に好かれたい 恨みを残したくない」日本のスタイル

 「皆様にご迷惑やご心配をおかけしました」のような、謝罪の対象や責任の所在がよく分からないスタイルが主流になってきた日本。少々、残念な気がします。一方で、仲間内では「申し訳ない」「ごめん」などの謝罪は気軽にするのが特徴です。なによりも「和をみださない」「仲良く」に重きをおきます。

 自分が悪くないと思っていても、とりあえず謝ることで上手くいっていました。いわゆる「水に流す」という文化です。しかし、近年は「不用意な謝罪が責任や賠償につながる」ことから、冒頭のようなフレーズが流行しています。

 「自分ひとりが腹を切れば…」という武士道のような人も少なくなり、自分の地位を守るために、責任を明確にしない謝罪も増えてきました。

 その根本は「恨みを残したくない」という心理です。仲間からも、社会からも恨まれたくない。それでいて、自分の責任が問われなければ、なお良いというスタイルです。

 ざっくりと紹介した世界の失敗のフォロー。僕が世界を回って感じた分類なので、至らない部分もあるかと存じます。ただひとつ断言できることは、失敗例はたくさんあれど、失敗のフォローに唯一の正解はないということ。失敗の度合いに応じ、読者の皆様のご参考になれば幸いです。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「なかマジ - Nakamagi 3.0 -」、「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。

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