「声好き」にシフトして成功
ひとくちに言えば、さっぱりウケなかったのだ。
「まあユーザーのニーズをまったく考えずに始めたので……」
と、鮫島代表は当時の自分にあきれるように笑う。
しかし、音声を使ったコミュニケーションに可能性はあるはずだ。音声に確実なニーズがある場所はどこがあるだろうと考えた結果、鮫島代表は「オタク」にターゲットを振り向けることにした。
「自分自身もアニメとか声優さんが好きで、そういう打ち出し方をしたら、声で演じたい、アフレコしたい、ラジオドラマが好き。そんな方々がわーっと集まってきたんです。だったら、それに合わせてチューニングしようと」
これがTalkSpaceの始まりだ。法人格を取得したTalkSpaceはネットでじわじわと話題になり、東京のIT企業から出資の話も転がりこんできた。サービスの名前が一斉に広まったきっかけは、ニコニコ生放送の演者(生主)だった。
「あるとき、ニコニコ生放送の有名生主たちのあいだでアプリがウワサになったんです。ニコ生ほどポップに発信できるツールが珍しかったんですよね。そこで火がついて、一気にのびていきました」
ニコニコは今やインターネットの芸能界。有名な演者たちがランキングの上位を占め、新人がポッとデビューするのはむずかしい。カジュアルに、より気軽に使える“小さなニコニコ”のようなサービスは意外と望まれていた。
鮫島代表はその反応を受け、思いきった舵を切ることにした。