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編集者の眼第58回

Windows 10でiOSとOS XとAndroid用アプリを作ろう

2015年09月03日 17時24分更新

文●中野克平/Web Professional編集部

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エンバカデロ・テクノロジーズが9月1日に発表したソフトウェア統合開発環境(IDE:Integrated Development Environment)の「RAD Studio 10 Seattle」は、もっと使われてもいい気がする。だが、あまり使われている気がしない。

もともとはWindowsアプリをコンポーネントのドラッグ&ドロップとちょっとのコーディングで開発できるツールだったが、2011年登場のXE2からはOS XとiOSアプリが、2013年登場のXE5からはAndroidアプリが開発できる。確かに初期のころは「本格対応」とはいえないレベルだったが、2014年発売のXE6あたりから急速に品質が高まり、今年4月に発表されたXE8ではほとんど完成の域に達したといってもいい水準になった。

RAD Studio 10 Seattle

しかし、RAD Studioを使ってアプリを開発している、という声をあまり聞かない。なぜだろうか?

高い

オープンソースでそれなりの開発環境が揃うわけで、わざわざ開発環境にお金を払うメリットは、使ってみないと分からない。確かに、C++Builder 10 Seattle Professionalの新規購入価格は13万4000円。個人でも企業でも、作りたいアプリを作れるか分からない製品にすぐに払える金額ではない。ただし、AndroidアプリをC++で開発できるAppmethodは無料。Windows、iOS、OS Xアプリを作りたいなら個人プランが年額3万8000円で済む。

フレームワークが独自

言語仕様とフレームワークは別物だが、どの人気言語にも有力なフレームワークがある。RAD Studioでマルチデバイスなアプリを作るときは「FireMonkey」というフレームワークを使う。DelphiやC++ Builderで使われてきたVCL(Visual Component Library)とは別に、OSごとの違いを吸収するために作られたフレームワークだ。だから、WindowsもiOSもOS XもAndroidも、ひとつのフレームワークを使って、ひとつのソースコードからそれぞれのOS用のバイナリーをビルドする。「独自のフレームワークを新しく覚えるのって面倒だな」という躊躇は「OSごとにフレームワークを覚えずに済む」というメリットになる。

コミュニティーが弱そう

オープンソースでもなく、OSや言語のフレームワークとは別となると、コミュニティーにも頼りにくい。だが、日本ではそれほどでも全世界ではRAD Studioを使っている開発者はずいぶん多い。英語を含めて検索すれば、やり方が分からずに詰まっても、たいていの答えは見つかるだろう。

なぜRAD Studioに注目したいのか?

RAD Studio XEは、2011年の発売以降、おおむね6か月ごとのサイクルでバージョンアップを繰り返してきた。順当にいけば今回は「XE9」のはずだが、あえて「RAD Studio 10 Seattle」とシリーズ名からXEを外したのは「Windows 10への対応を強化したことを表すため。今後アップデートされるRAD Studio 10シリーズの第一弾として「シアトル」を使ったのもマイクロソフトの本拠地を意識した」(日本法人の藤井 等代表)という。

My Work Desk

エンバカデロ・テクノロジーズ日本法人 藤井 等代表

RAD Studio 10 Seattleの特徴は3つある。第1はIDEの改善だ。ビルド時に利用可能なメモリーサイズを2倍にすることで、大規模プロジェクトもIDE内で構築可能になった。また、マルチモニターのサポートを強化し、コード、デザイン、データベースなど、開発者が参照する情報を異なるディスプレイに表示する機能を改善した。さらにパッケージマネージャ「GetIt」を組み込み、開発環境からライブラリーやコンポーネントを検索し、インストールできるようにした。MongoDBへの対応やAndroidサービス(バックグランド処理)の作成など、細かい部分でも機能が強化された。

第2の特徴はWindows 10の最新機能への対応だ。Windows 10 API向けWindows SDKのサポートはもちろん、通知センターやコントラクトなど、主要な機能をコンポーネント化し、SDKを利用するコードを直接書かずに済むようにした。また、動作中を表すアクティビティインジケーターや検索ボックス、レラティブパネルなどのWindows 10の新しいルック&フィールに対応するスタイルを用意。しかもWindows 8.1以前で実行してもWindows 10同等に表示する。

第3の特徴はC++11への対応だ。LLVM(Low Level Virtual Machine)対応のWin32 C++コンパイラを搭載し、C++11の最新仕様を活かしたコードを記述できる。

RAD Studio 10 Seattleを、同社の伊賀敏樹シニア・セールスコンサルタントは「コンポーネント技術により、クラウド、各種デバイス、ブルートゥース接続などに柔軟に対応できる開発環境だ」と位置づける。企業にとってのマルチデバイスはスマホ、タブレットの導入から始まった。その後、デバイス上でWebアプリを使うようになった第2段階があり、より専門的用途に使うネイティブアプリ、バックエンドとの接続が可能になった第3段階に達している。Windows 10の登場で、アプリの使用環境はタブレットだったりノートPCだったりと変わること、アプリの通信相手が同じPC内の他のアプリに加え、モバイル、クラウド、IoTと多様になった。しかし、だからといってWindows 10だけではなく、デスクトップ型の旧バージョンOSも考慮しなければならない。従来のWindowsでも動作しつつ、異なる画面サイズ、利用シーンに対応する作り分けが必要な第4段階が訪れたのだ。

エンバカデロ・テクノロジーズ 伊賀敏樹シニア・セールスコンサルタント

12月27日までDelphi 1のユーザーもキャンペーン価格で購入可能

RAD Studio 10 Seattleは、単体製品のDelphi 10 Seattle、C++Builder 10 Seattleとどちらも使えるRAD Studio 10 Seattleの3系統に、機能が異なるProfessional、Enterprise、Ultimate、Architectのエディションがある。製品価格は、RAD Studio 10 Seattle Professionalの新規購入が24万円(バージョンアップ版は14万5000円)、Delphi 10 Seattle Professional、C++Builder 10 Seattle Professionalが同13万4000円(同7万4000円)など。また、Delphi、C++ Builderの最初のバージョンを含む全バージョンのユーザーは、9月29日まで実施の10 Seattle発売記念キャンペーンで、新規購入価格の45%オフとなるほか、新規購入も10%オフになる。

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