大きなガラス窓の向こう、雨の桜島が見えた。鹿児島に初めてできた、技術系コミュニティーとスタートアップの集合地『さくらハウス』だ。開設準備に忙しい、管理人の永田司さんが笑顔で出迎えてくれた。
「このビルは11階建て。鹿児島でこれだけの眺望は珍しいですよ」
いい景色ですねと伝えると、永田さんは満足そうにうなずいていた。
鹿児島スタートアップを盛り上げたい
さくらハウスは9月1日オープン。昼間はコワーキングスペースとして貸し、夜はIT系勉強会やハッカソン(開発系イベント)が開ける。スタートアップ系のゲストを招き、ニコニコ生放送を配信する予定もある。
さくらハウス発案のきっかけは6月開催の『スタートアップハック』。鹿児島県内のスタートアップを集め、盛況に終わったイベントだ。1回だけで終わらせず、鹿児島の起業家たちを継続的に盛りあげる「場所」が欲しいと考えた。
「鹿児島に(地元だけではなく全国、世界をめざす)スタートアップというのは2社くらいしかない。もっとプレイヤーを増やしたくて」と永田さん。
永田さんは鹿児島発のスタートアップ・ユニマルのCOO。ウェブに特化したバージョン管理ツールを開発、コンテスト『鹿児島ベンチャーサミット』で優勝。創業半年にしてサムライインキュベートから資金を調達した。
以来、東京に足しげく通ってコネクションをつくってきた。自分たちが積み重ねたノウハウを使い、地元のスタートアップ文化を盛りあげられたら。
「鹿児島のスタートアップそのものが廃れていると思われると評価も下がり、起業家のモチベーションも下がってしまいます。九州でも盛り上がっている福岡にはVCの目が行き、チャンスがあふれています。鹿児島もそうなってほしくて」
さくらインターネット、投資会社の宮崎太陽キャピタル、ドーガン、サムライインキュベート、またトーマツベンチャーサポートといった有力なスタートアップ支援企業を後援に迎え、全国につながるきっかけを作るのもさくらハウスの役割だ。
「全国的につながっていけるのをメリットにしたい。いままでくすぶってた人たちがやろうかなという一歩先に来てくれるんじゃないか」
さくらハウスで盛り上げたいという思いはスタートアップだけではない。鹿児島の技術系コミュニティーも同じだ。