スタートアップに最適な米西海岸
でも気象に興味がある人にとっては退屈な場所
筆者は特に専門家ではありませんが、気象/地学の分野が趣味として好きです。中学の自由研究でテーマに選んだり、高校の選択授業で気象を取ったり、大学でひまわり画像の解析などのテーマが関わるとして「画像処理論」を履修したりするほどです。
米国の西海岸に来て、大きな不満は、天気がつまらないことです。台風から大雪まで、色々ありすぎる日本と比較する方が間違っているのかもしれませんが、落差の少ない気候に、着るものもだんだん季節感を失っていきます。
「午前中は霧、午後は快晴、夕方から夜にかけて再び霧、気温は毎日13度程度から23度程度まで上がり、雨はなし」以上。春から秋まで、ずっとそんな天気です。冬場は思い切り雨が降るとのことですが、筆者が引っ越してきてからの数年間の冬は、イマイチの降り方です。
別にバークレー近辺が水源地ではないのですが、カリフォルニアの記録的渇水にも納得ができるといったところです。
とにかく変化のない気候は、シリコンバレーの起業家の心の支えにもなっていると指摘する人もいます。スタートアップはうまくいくことばかりではありませんから。
晴れ渡った晴天がいつも見られると、救われたり、気持ちが前向きになったりするのかもしれません。それとも派手に見えて淡々と取り組む必要があるスタートアップのビジネスに向いているのかも。
モバイルクラウドソーシングを
天気予報に活用したウェザーニューズ
実はこの仕事を始めた2005年に初めてインタビューに行った先は、民間気象会社で、ケータイをきっかけにBtoCの気象情報サービスを始めたウェザーニューズでした。
もともと船舶や航空機などのビジネス向けに気象サービスを提供してきた同社は、気象予報の自由化にともなって一般向けの天気予報サービスをスタートし、1999年のiモードスタートともにケータイに参入してユーザーを伸ばしてきました。
そしてケータイのカメラが当たり前になるタイミングで、今度はユーザーから空の写真やその場の天気の様子を集めて、気象予報に役立てようとする取り組みを始めます。
おもしろいのは、月額料金をもらっているユーザーから、気象データまでもらおうという取り組みがうまくいったことです。当時の取材では、気象に興味があるユーザーから良質な情報を集める、フィルターの役割を果たしたという話を聞きました。
今でこそ、「クラウドソーシング」という言葉で語られるユーザーからの情報収集ですが、集めた情報を専門化である気象予報士が処理し、これまでも活用していた衛星の写真や実測の気象情報、レーダーなどと組み合わせることで、きめ細かなサービスを提供するようになりました。
これによって、予測が難しいゲリラ雷雨のアラートや、10分単位で天気を予測するサービスなどを実現できるようになり、ユーザーとしても、自分たちのウェザーレポートが役立っている、という「手応え」を感じることができたのです。
現在のウェザーレポーターは800万人。体感を生かした草の根気象観測網が広がっているのです。
(次ページでは、「お天気ビーコンで、さらに細かな予想が可能になる!?」)
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