ハイエンドでは宿敵となるApple
中国でも大きくシェアを伸ばしている
ハイエンドを見てみると、Appleの強さに舌を巻かざるをえない。IDCの数字では、Samsungが第2四半期に出荷したスマートフォンは7320万台、これにはGalaxy Sシリーズ以外のスマートフォンも含まれるが、Appleは(ハイエンドである)iPhoneのみで4750万台。画面は大きくなり、中国のLTEにも対応したことから、大好評だったという(つまり、Samsungはハイエンドでもミッドレンジでも、中国市場で課題を抱えている)。
Samsungの長期的課題は明らかだ。Appleのようにエコシステムを握ることができないという点にあり、これはAndroidを使っている限りは同じことだ。サービス側のポートフォリオを確立しようと、音楽や決済に拡大を図っているが、成功する確証はあまり見えない。一方で安価にスマートフォンが作れる、アプリのエコシステムがあるという魅力を持つAndroidは、PCでいうところのWindowsのようにコモディティー化し、700ドル近くを払って買う人はどんどん少なくなっていく。
サービス面でのSamsungの課題は、絶頂期のNokiaと重なっている(NokiaはSymbianを事実上握っていたのだが……)が、違いもある。Samsungは半導体、ディスプレーパネルなどの部品も事業としており、ここは上述のような途上国のAndroidメーカーのおかげで実は好調なのだ。
Samsungはさらに、Galaxy S6 edgeのエッジディスプレーの他社への提供も計画しているという。このようなデバイス事業の好調さは、(スマホは不調でも)イメージセンサーが好調だったソニーも同じトレンドといえるのかもしれない。
Samsungは8月13日に発表する新製品(おそらくGalaxy S6 Edge PlusとNote5)を今後の好材料に挙げているが、Nokiaとソニーの背中を見てきたSamsungは、自分たちの課題をよく熟知していることだろう。スマートフォン市場は今年も2桁成長が見込まれるが、スマホ市場は凋落が激しく、冷酷な市場なのだ。王者Samsungはどのように踏ん張るのか。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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