東京工業大学は2月26日、温めると縮む新材料を発見したと発表した。既存材料の2倍以上の「負の熱膨張率」を持つため、産業用に利用しやすいという。
一般的な物体は温めると膨張するが、材料によっては縮む負の膨張率を持ち、熱膨張により材料の変形を補う用途に利用されている。現在知られている負の熱膨張を持つ物質は膨張(収縮)係数が小さい点が問題で、1度あたり100万分の40程度しかなく、大きな負の膨張率を持つものも温度履歴(加熱/冷却時の試料長さの差)が大きく熱膨張抑制材料として不向きだった。
東工大や中央大、京都大などの研究グループは、酸化物BiNi1-xFexO3(ビスマス・ニッケル・鉄酸化物)に着目、大型放射光施設SPring-8を使って精密な結晶構造や結晶の体積変化のしくみを調べ、負の膨張が起きる温度域や温度履歴をコントロールするため素材濃度を調整、BiNi0.85Fe0.15O3が良好な負の膨張率を持つことを確認した。
合成した新材料をエポキシ樹脂に18%分散させた複合物では、エポキシ樹脂の膨張率(100万分の80)を相殺し、27℃から57℃の範囲で膨張率をゼロにすることに成功した。今回新たにに発見された負の熱膨張材料は精密光学部品や精密機械など、さまざまな利用が機体されるとともに、本物質は温度変化の際に絶縁体-金属転移を伴うことから高精度なセンサー材料への応用も考えられるという。
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