東北大学は11月5日、科学技術振興機構の研究課題として技術研究を進めている災害時にも必ず繋がるネットワーク技術「ディペンタブル・エア」を提案、2014年アジア・パシフィックマイクロ波会議にて発表した。
東日本大震災では、基地局の喪失や電源停止で情報ネットワークが分断されることに加え、通信集中による輻輳で電話やメールが繋がりにくい状況となった。ディペンタブル・エアでは、単に基地局のバックアップシステムやフォールトトレラント性能、通信容量の向上だけではなく、通信端末それぞれに最適な通信回線を選択することで、いかなる状況でもネットワークに接続できる環境を提供するという。
具体的には、準天頂衛星を用いた高度な位置情報・時刻情報を活用する。ひとつは準天頂衛星と端末間で時刻情報を正確に同期し、SS-CDMA(スペクトラム拡散CDMA)を用いれば、携帯電話のアンテナや送信出力でも準天頂衛星と通信できるというもの。ショートメッセージによる安否確認などが可能で、シミュレーションでは1時間あたり300万台を超える端末を扱える。
もうひとつは端末が接続する地上基地局を最適化するもので、準天頂衛星や従来のGPSを利用することで端末の位置情報を制御局に送信。制御局ではアクセスする端末の位置、各基地局の位置と混雑状況を統計処理してマップ情報にし、端末はマップ情報から接続すべきネットワークを選択する。従来のように端末か各自にネットワークを検出して最寄り基地局に繋げようとするよりもネットワークの負荷が軽減される。
さらに洋上船舶や水中通信も将来的な通信手段として利用することを想定するという。基地局や端末すべてを刷新するシステム構想であるため、すぐに実用化というわけではないが、科学技術振興機構をはじめ各研究機関や企業の協力によって進められており、準天頂衛星のナノ秒精度を活かした災害に強い情報ネットワークの整備として期待される。
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