高精度を要求される機器を超精密に製造可能し、磨き工程なしに鏡面加工の可能性も
産総研、円周360度を約86億に分割できる超高分解能ロータリーエンコーダーを開発
2014年04月23日 17時41分更新
産業技術総合研究所(産総研)は、マグネスケールと共同で、超高精度で超高分解能のロータリーエンコーダーを開発した。
ロータリーエンコーダーは機械などに組み込んで角度情報を計測する部品。小さなものではマウスホイールなどダイヤル式コントローラーで回転数や角度をパルス信号のカウントとして出力し、ロボットの関節などに仕込んでアームの角度を制御装置に伝えるといった用途に使われている。
開発されたのはNCマシン(数値制御工作機械)などに使用するもの。一般的な工作機器用のロータリーエンコーダーの場合、360度を数万~10万のパルスとして角度をカウントする。マグネスケールのロータリーエンコーダーは200万パルス以上をカウントし、内挿分割したデジタル角度信号では100億パルス以上の分解能を達成しているが、検出ユニットが分離しているため回転軸のわずかな偏心が誤差となって超高精度とはいえなかった。
今回産総研とマグネスケールでは、産総研が開発した格子干渉計方式のSelfA(自己校正機能付き角度検出器)技術を高分解能ロータリーエンコーダーに組み込んで実証実験を行いった。8個の検出器からの出力を相互に自己校正させて精度を高めるもので、これまでの機器では達成できなかった±0.03″(角度秒)の超高精度で角度を計測できた。これは円周360度を2の33乗(約86億)に分割できる分解能にあたる。
産総研では、このロータリーエンコーダーを組み込んだ工作機械で複雑なエンジンブレードなどの加工を行うことで形状精度が工場に加えて加工面の表面粗さを改善、研磨することなしに鏡面加工を行える可能性があるという。また、タービン部品や風力発電の歯車のように大型化と精密加工の両立が必要となる部品の加工精度と生産性の向上が期待される。
開発・研究は終了しているため、マグネスケールにおいて検出ヘッドと内挿回路をユニット化したトータルシステムの商品化を検討するほか、さらなる精度改善にも取り組むという。