ウエディング、オタクグッズ、農業用品まで、怒涛のような商品追加で「進撃のアマゾン」と一部では話題になった(?)Amazon.co.jp。現在、「ネコ」と検索すると20万件以上の商品が出てくるが、39件目に表示されるのは「ネコがきた2」というアプリ。価格は0円、つまり無料だ。

ネコがきた2
検索結果にアプリが表示されるようになったのは6月4日から。アマゾンのアプリストアは2011年2月から始まったもので、これまで国内ではあまり知られていなかったが、最近は人気のゲーム「パズル・アンド・ドラゴンズ」のテレビCMなどでも紹介されて認知度が高まっている。
小売りのアマゾンがなぜ無料アプリを売るのか。答えは昨年、Kindle Fireを発表したときのジェフ・ベゾスCEOのプレゼンが分かりやすい。
ベゾスCEOは、Kindle Fireでゲームアプリをプレイしながら言う。
「画面の右上にある金色の宝箱を見てほしい。これをタップすると、ゲームに登場するキャラクターの商品があらわれる。商品はワンクリックで購入できる。これを購入すると同時に、ゲームに新しいキャラクターが登場する。そして手元には、フィギュアが届く」
そのねらいは、デジタルとリアルの商品を同時に売ることだ。
流通業界ではネットとリアルの売り場同士をつなげる「O2O」(オンライン・トゥー・オフライン)が盛んだが、アマゾンはそれを商品単位で実行しようとしている。
写真=アマゾン公式動画
参入事業者の利益を最大化することで
アマゾンのエコシステムを拡大していく
商品のO2Oをねらうにあたり、アマゾンが重視しているのは開発者だ。
市場を活性化するにはまず商品=アプリの品揃えを充実させる必要があり、参入事業者=アプリ開発者の利益を最大化する必要がある。
これまで開発者がアプリだけで収入をあげるのは難しかった。そこにアマゾンは商品を結びつけるという新たな収入源を用意した。アマゾンではすべての商品が「ASIN」というIDで管理されているため、商品の購入はアプリからIDを呼び出すだけでいい。
アプリ内の広告システムも強力だ。「Mobile Ads API」という、レコメンドシステムを活かした独自の広告エンジンを備えている。アマゾンいわく「お客さんが一番見たいと思う広告」を表示することでコンバージョン率が高められるという。
また、アマゾンはアプリもワンクリックで購入できる。商品を買うハードルが低いことで、アプリの課金率も高いそうだ。「Tiny Village」というゲームでは、アップルを100%としたとき、グーグルは65%、対してアマゾンは180%の高い課金率を示したという。課金率を高めるために「Amazon Coins」というアプリ内仮想通貨の試験運用も開始している。
アプリのほかにもアマゾンのO2O戦略は始まっている。アマゾンは今年1月、CDを購入すると自動的に音源データが同時配信される「AutoRip」という仕組みを米国で導入した。これは書籍やDVDなど、ほかの商品でも十分応用可能なはずだ。
モノとデータを軽々と横断するアマゾンの流通戦略は、これから売上の中核を担っていくだろう。競合はこの流通モンスターを相手に、どう戦っていけるのだろうか。
※ この記事は、AWS Summit Tokyo 2013 アマゾンジャパン アプリストア事業部 岡崎淳一氏のトークセッションを元に作成したものです。
