超高解像度で作業効率アップ
4K2Kを体験!マウスFirePro搭載PC&シャープ「PN-K321」
次世代テレビの規格として「4K」というキーワードを比較的よく見かけるようになった。4Kとは、長辺の解像度が4000ドット付近になる解像度の総称だ。テレビなど放送に使うディスプレーは、通信方式から1フレームあたりの転送量や転送時間が決まるため、縦または横の解像度を指定すると、残りの辺の解像度は計算で求めることができるため、片方の解像度のみで規格を表わすことが多い。
テレビの4Kは、現在のフルハイビジョンの解像度1920×1080の2倍となる3840×2160を採用する。整数倍とすることで、現在のハイビジョンコンテンツを簡単に表示できるようになるからだ。PC的にいえば、4K×2Kという解像度。これを4K2Kディスプレーなどという。
次世代テレビとしての登場にはまだ時間があるが、先行してPCなどのモニターディスプレーが、この解像度で登場しつつある。メーカーとしては先行させて量産化を行ない、コストを下げるといった目的もあるだろうし、サービス開始に先立って、放送局など送出や編集などの機器が採用するという見込みなどもある。
今回は、4K2K環境を体験すべく、4K2K出力が可能なグラフィックスカードAMD「FirePro W5000」を搭載したマウスコンピューターのデスクトップPC「MDV-AFX9220SW5-WS」、32インチの4K2Kディスプレー「PN-K321」を用意した。
PN-K321は、スマートフォンなどで話題の同社IGZO技術を採用した4K2Kディスプレー。透過率が高いため、バックライトのLEDをエッジ型とすることが可能になり、サイズに比べて厚みが35ミリと薄く、軽く一人でも移動させることが可能だ。PCとの接続用にDisplayPortを装備しているほかHDMI入力を2ポート備える。
4K2Kのような超高解像度の場合、GPUが必要な解像度をサポートしていることはもちろんだが、この解像度に対応したインターフェイスが装備されている必要がある。今回の評価では、FirePro W5000のDisplayPort出力で接続を行なった。ケーブル1本で接続が可能で接続などには特に問題はなかった。
なお、こうした超高解像度ディスプレーでは、解像度とリフレッシュレートによって接続方式を変える必要がある。DisplayPortは複数の画像イメージを1つのケーブルで配信するマルチストリームが可能であるため1本のケーブルで4K2Kでリフレッシュレート60Hzの表示が可能だが、HDMIを使う場合には、2つのHDMIポートを利用する必要がある。また、DisplayPortのマルチストリームやHDMI2ポートによる接続は、ディスプレー側、グラフィックスカード側がともにサポートしている必要があり、グラフィックスカードやディスプレーにコネクタが装備されていることは、必ずしもこれらの機能をサポートしていることを意味しないので注意が必要だ。なお、PN-K321は、リフレッシュレートを30Hzまで落とすと、HDMIの1ポートによる接続が可能だ。
4K2K環境を使ってみる
実際に「MMDV-AFX9220SW5-WS」とPN-K321の組み合わせを利用してみると、32インチというディスプレーサイズによる迫力もさることながら、4K2Kという高解像度に大きなメリットを感じる。
たとえば、Webページの多くは、XGA(1024×768)を想定してデザインされているが、4K2Kあればこうしたページを表示するブラウザを3枚横に並べて表示させることが可能だ。縦方向にも広く表示できるため、スクロールさせることなくページ全体を表示できるサイトも多い。
多くの作業でインターネット上のドキュメントやサイトを参照することが一般的な現在、Webブラウザを起動しつつ、作業に使うアプリケーションも表示することは少なくない。あるいは、PDFリーダーのような電子ドキュメントを参照しつつ作業することもあるだろう。このような場合に、参照用のウィンドウに十分な大きさを割り当てても、作業用のアプリケーションに大きな領域を割り当てることができる。重なり合う複数のウィンドウを切り替えて使うよりも作業効率が高いといえる。
また、グラフィックス関連のアプリケーションでは、描画領域のほかに各種のツールやサブウィンドウを併用することが多いが、このような場合にも、多数のツールやサブウィンドウを表示させつつ、メインの描画領域に大きな範囲を割り当てることができるというのは大きなメリットだろう。
ソフトウェア開発などでも、IDE(統合開発環境)の表示ではやはりツールやサブウィンドウを利用する。また、エミュレーターやターゲット画面の表示なども必要となり、こうしたウィンドウが重なり合うことなく常に表示できるというのは大きなメリットだ。
通常のマルチディスプレーでも、同程度の解像度を持つデスクトップを実現することは不可能ではないが、ウィンドウをディスプレー単位で配置する必要がある。また、その物理的サイズなどから、1つの32インチディスプレーよりもかえって広い場所が必要となることもある。また、同じDPIのディスプレーを利用できればいいが、そうでない場合、WindowsのDPI設定がディスプレーごとには行なえないために、モニタにより文字の見やすさが変わってしまうという問題もある。
32インチという大きさのメリットは、WindowsのDPI設定を標準とした場合にも文字表示などに十分な大きさがある点だ。画面サイズが大きいために、DPI設定(文字の大きさ)が100%でも文字が読みやすく、アプリケーションの表示領域が相対的に広くなってくれる。スクリーンサイズが小さいと、DPI設定を変更して標準文字サイズを拡大しないと文字が読みにくくなってしまうが、PN-K321にはその必要がない。Excelなどのアプリケーションでは、セルに表示される文字の大きさが基準となり、一度に見渡せるセル範囲が決まる。設定として文字サイズを表示することもできるが、メニューやタブに表示される文字の大きさはシステムが管理しており、これはWindowsのDPI設定で決まる。これを既定値のままで利用できるというのは大きなメリットだ。
しかし、解像度が高いということは、描画するドット数が多くなるということを意味し、このために、画面描画の負荷が大きくなる。これは、ソフトウェアおよびGPUの性能に依存する。
今回評価したMDV-AFX9220SW5-WSは、CPUにCore i7を採用し、GPUにはFire Pro W5000を採用している。W5000は、現行のFire Pro Wシリーズでは最下位の製品だが、Fire Proシリーズは、プロフェッショナル向けのグラフィックスシリーズであり、一般製品よりも高い性能を持つ。
プロ向けのCADアプリケーションなどを評価したわけではないが、実際に利用した感じでは、このW5000と4K2Kディスプレーの組み合わせで、特に能力不足を感じることはなかった。ウィンドウやアプリケーションの描画にもたつきなどは感じらない。
Windowsの性能評価である「パフォーマンスの情報とツール」で表示される「Windows エクスペリエンス インデックス」では、グラフィックスは、Aero(2D)およびゲーム(3D)ともに7.7というスコアとなった。Windows 7ではこのスコアは最大が7.9なので、ほぼ最高性能といってよいだろう。
プロセッサに関しては7.8、メモリに関しては7.9というスコアなので、グラフィックス以外の計算処理にも問題はない。ただ、HDDの評価のみ5.9と振るわないが、これはSATA方式のHDDを採用しているためで、必要に応じてSSDへの変更やRAIDを組むことなどで改善が可能だ。もっとも、本機はメモリも大きく、スワップの頻度は低く、多少HDDが遅くとも、大きくシステム速度の足を引っ張るようなことはない。
筐体は、いわゆるミニタワー構造であり、あとから必要な周辺デバイスを装備することも可能だろう。
MDV-AFX9220SW5-WSは、そのスペックから、誰にでも勧められるというものではないが、高い作業効率を必要とするいわゆるビジネス用途なら検討する価値はあるだろう。4K2Kの高解像度は、これまでの作業環境とは大きく違っている。マルチディスプレーを使えば、同程度の大きさのデスクトップ解像度を実現することは可能だが、1枚の継ぎ目のない画面と額縁で分割されるマルチディスプレーには大きな違いがある。