インテルは26日、秋葉原にて記者説明会を開催し、同社が推進する「Ultrabook」がなぜ従来のパソコンよりも速くて快適なのか、その理由について説明した。
説明会冒頭で登壇した、同社代表取締役社長の吉田和正氏は、2011年には21機種だったUltrabookが、2012年には110種類もの製品が発売予定にあると述べ、Ultrabookは大きく普及する境目「ディッピングポイント」を超えたとした。
また、同社マーケティング本部長の山本 専氏とインテル技術本部長の土岐英秋氏による講演では、Ultrabookがなぜ速くて快適なのか、盛り込まれた技術的なポイント3点についての解説やデモが行なわれた。
まずUltrabookの大きな特徴である「起動・復帰の速さ」については、「インテル ラピッド・スタート・テクノロジー」が大きく貢献しているという(Rapid Storage Technologyとは異なる)。一般的な設定のWindows 7の場合、ノートパソコンが「スリープ状態」(Suspend to RAM)に入ってしばらくすると、メモリーの内容をHDDに書き出してさらに低消費電力な「休止状態」(Suspend to Disk)に移行する。ただし、休止状態からの復帰は数GB分のメモリーの内容をHDDから読み込む動作が入るため、どうしても「蓋を開けばすぐ使える」というほどのレスポンスの速さは期待できない。
そこでラピッド・スタート・テクノロジーでは、スリープ状態のメモリーの内容をキャッシュ(SSD)上に保存して、電気的には休止状態と同じ状態に切り替わる。OSから見るとスリープ状態のままだが、消費電力は休止状態並みの状態になるわけだ。復帰の際にも読み出しの速いSSDからメモリーの内容を読み込むので、その分だけ高速というわけだ。「ストレージがSSDならば、休止状態と変わらないのではないか?」と思われるかもしれないが、OSからはスリープのままに見えること、休止状態で必要な復帰処理をスキップできることといった利点により、さらに高速な復帰が可能となるわけだ。
Ultrabookの快適さを実現する技術のひとつが、「インテル スマート・コネクト・テクノロジー」である。こちらは待ち受け状態のスマートフォンが、自動で情報の受信や同期を行なえるのと似たような機能を、Ultrabook上で実現する技術だ。ハードウェアだけでなく、アプリケーション側の対応も必要である。また同種の機能は、マイクロソフトがWindows 8で「Connected Standby」として導入の予定である。
簡単に言えば、スマート・コネクト・テクノロジーに対応したUltrabookとアプリケーションの組み合わせであれば、スリープ中でも適宜無線LANアクセスポイントを検索しにいき、見つかればスリープから復帰してネットから情報を取得、見つからなければスリープに戻る。ユーザーがUltrabookをスリープから復帰させれば、常に最新の更新情報が得られているという仕組みだ。
この機能を使うには、対応するハード(インテルCPUとチップセット、無線LANモジュールなど)とアプリケーションが必要で、また接続先のサービス側も、なるべく情報をコンパクトにまとめて送信するといった配慮が必要となる。会場ではzigsow(株)の運営する「Ultrabooker.jp」の更新情報を送信するサービス「zigsow Arch for Ultrabook」のデモが披露されていた。
そのほかにも、少量のSSDとHDDを組み合わせて、HDDの大容量とSSDの高速さをある程度両立させる「インテル スマート・レスポンス・テクノロジー」など、既存のパソコンにはないさまざまな利点を、Ultrabookは備えるとしている。
説明会会場では、第3世代Coreプロセッサー(Ivy Bridge)を搭載したUltrabookの機能を生かした、3Dゲームやビデオ再生・エンコードのデモなども披露されていた。モバイルノート=性能面で制約が多いといった図式は、Ivy Bridge搭載Ultrabookでは無縁のものとなりそうだ。