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アップルが16年ぶりとなる株式配当と自社株買いを発表

今なぜ配当と自社株買いか? Cook氏が目指すアップルは?

2012年03月21日 10時00分更新

文● 鈴木淳也(Junya Suzuki)

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 アップルは3月19日(米国時間)、1995年12月以来、16年以上もの沈黙を守って株式配当を再開すると発表した。同社は直近の2012年度第1四半期(2011年10〜12月期)決算において175億ドル(約1.46兆円)のキャッシュフローが増加したことを報告するなど、累計で約1000億ドル(約8兆円)ともいわれる膨大なキャッシュの使い道に注目が集まっていた。

 前任のスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏は、経営が安定軌道に乗っても研究開発投資とビジネスの拡大以外でキャッシュの明確な用途を示さなかったが、ティム・クック(Tim Cook)氏がCEOに就任してから半年、同社にとっては初の大きな方針転換といえるかもしれない。

アップルCEO ティム・クック(Tim Cook)氏

成長投資あっての株主還元

 アップルは発表前日の18日、同社CEOのクック氏とCFO(高財務責任者)のピーター・オッペンハイマー(Peter Oppenheimer)氏の2名が同社のキャッシュバランスに関するカンファレンスを19日に開催するとの予告を行なった

 すでに一部報道では指摘されていたが、このカンファレンスはあくまでキャッシュの取り扱いに関するものであり、同社の事業見通しや製品計画に関するものではないとの前置きが行なわれていた。累積したアップルの膨大なキャッシュは多くの注目の的であり、株主らからは配当を求める声が日増しに強まっていたため、今回の発表はそれに応えたものとなる。

 カンファレンス冒頭で挨拶したクック氏は、直近の四半期で3700万台のiPhoneが販売され、携帯全体のシェアで9%を獲得したことを報告。ほかの同社製品ポートフォリオやiCloudといった新サービスが順調に立ち上がり、成長を続けていることを強調した。先週発売されたばかりの通称「The new iPad」については「非常に大きなセールス」ということで具体的な数字を出さなかったものの、同日に出されたプレスリリースによれば、週末を挟んだ最初の3日間だけで300万台のセールスを記録した。新型iPadは最初の9ヵ国に続いて、今週末にはさらに25ヵ国での販売がスタートすることになる。すでに主力商品としての地位を築いているといえるだろう。

 これに対して同氏は「これまでアップルは好調なセールスから膨大なキャッシュフローを得て、これを開発、買収、Apple Retail Storeの新規オープン、サプライチェーンへの投資、インフラ構築といったものに投資してきた。今後も成長に必要な投資を継続する予定で、アップルにとってはイノベーションが最も重要だ」とキャッシュの利用意向に関する基本理念を説明しつつ、株式配当の開始ならびに自社株買いプログラムの実施を発表した。

 同日に発表したプレスリリースによれば、四半期の株式配当(Quarterly Dividend)は1株あたり2.65ドルで同社会計年度で2012年第4四半期(2012年7〜9月期)に開始、また450億ドル(約3.76兆円)規模の自社株買いプログラムを同社会計年度で2013年第1四半期(2012年10〜12月期)にも開始する計画だという。自社株買いプログラムは今後3年継続する見込みで、その目的は従業員の株式売却や自社株買いプログラムで発生する株価変動を押さえることにあるという。

 このQ&Aを含むカンファレンスの模様はアップルのサイトで音声リプレイで確認可能だ。

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