キヤノン(株)とキヤノンマーケティングジャパン(株)は4日、東京・品川のキヤノンSタワーにプレス関係者を集め、同社としては初参入となるデジタル商業印刷向け高速カラープリンター“imagePRESS(イメージプレス)”シリーズ2製品と、オフィス向けカラー複合機(カラーMFP)の上位モデル “Color imageRUNNER(カラー イメージランナー)”シリーズ3製品を発表した。発表会には、5月11日にキヤノンの代表取締役社長に就任した内田恒二(うちだつねじ)氏が製品発表の場に初めて登壇したことから、プレス関係者が普段よりも多く駆けつけた。
キヤノンの代表取締役社長の内田恒二氏 |
最初に挨拶した内田氏は、同社が今年から掲げているグループ全体の5ヵ年戦略“グローバル優良企業グループ構想フェーズIII”を引き合いに出して、「最終的に、世界の優良企業100社に数えられる会社にしたい。そのためには、フェーズIIIの最終年度(2010年12月)に売上高5兆5000億円、営業利益率10%を目指す」と述べた。それを達成するための新規市場開拓の一環として、同社が従来手がけてこなかったデジタル商業印刷市場への参入と新ブランド“imagePRESS”2製品を展開、およびローエンド/ミッドレンジに比べて製品展開が手薄だったカラーMFP “Color imageRUNNER”の上位機種に3製品を投入すると、今回の発表の背景を説明した。
“imagePRESS”2製品(3タイプ)の価格/発売日
発表会後の記念撮影に臨んだ内田氏 (右)とキヤノンマーケティングジャパンの代表取締役社長の村瀬治男氏(左)。中央にあるのが『キヤノン imagePRESS C1』 |
- キヤノン imagePRESS C7000VP Server A3000モデル
- 3000万円/12月発売
カラー/モノクロとも毎分70枚(A4横)の高速印刷が可能な上位モデル。プリントサーバーセット - キヤノン imagePRESS C7000VP LIPSプリンタモデル
- 1900万円/12月発売
カラー/モノクロとも毎分70枚の高速印刷が可能な上位モデル - キヤノン imagePRESS C1
- 340万円/8月4日発売
カラー毎分14枚、モノクロ毎分60枚の印刷が可能な下位モデル
“Color imageRUNNER”3製品(6タイプ)の価格/発売日
『キヤノン Color imageRUNNER iR C5180N』 |
- キヤノン Color imageRUNNER iR C5180N
- 230万円/今月下旬発売
カラー毎分51枚の印刷エンジン(タンデム方式)を持つ最上位機。コピー/プリント/スキャン、および機能拡張システム“MEAP”によるアプリケーションの追加が可能。オプションでファクス機能の追加も可能 - キヤノン Color imageRUNNER iR C5180
- 220万円/今月下旬発売
コピーと“MEAP”によるアプリケーションの追加が可能なベースモデル。プリントやスキャン、ファクスは追加オプションが必要 - キヤノン Color imageRUNNER iR C4580F
- 235万円/今月下旬発売
カラー毎分40枚の印刷エンジン(タンデム方式)を持つ上位機。コピー/プリント/スキャン/ファクス、および“MEAP”によるアプリケーションの追加が可能 - キヤノン Color imageRUNNER iR C4580
- 195万円/今月下旬発売
コピーのみ可能なベースモデル。プリント/スキャン/ファクスは追加オプションが必要 - キヤノン Color imageRUNNER iR C3880F
- 225万円/今月下旬発売
カラー毎分30枚の印刷エンジン(タンデム方式)を持つ上位機。コピー/プリント/スキャン/ファクス、および“MEAP”によるアプリケーションの追加が可能 - キヤノン Color imageRUNNER iR C3880
- 185万円/今月下旬発売
コピーのみ可能なベースモデル。プリント/スキャン/ファクスは追加オプションが必要
キヤノンの出力機器ラインナップにおける、imagePRESSの位置づけ |
続いて、キヤノンマーケティングジャパンの代表取締役社長の村瀬治男氏が代わって壇上に立った。村瀬氏の発言によると、キヤノンマーケティングジャパンも今年から長期経営計画(5ヵ年計画)をスタートしており、最終年(2010年)には売上高1兆1000億円(キヤノングループ全体の約20%)、経常利益率5%を達成するのが目標で、これを実現するには年平均5~6%の成長が必要になるという。
Color imageRUNNER シリーズにおける新製品3機種の位置づけ |
今回発表された業務用プリンターの新製品は、同社が“高収益型事業の拡大”を目指す柱に位置づけられるもので、
- ドキュメントビジネスの競争力強化と市場の拡大を図る
- ITソリューションを中核事業に据える
といった戦略に基づいたもの。
imagePRESSを投入する業務用ハイエンドカラープリンター(デジタル商業印刷やグラフィックアート)市場は、小ロット/短納期のオンデマンド印刷を中心に需要が高まっている市場で、同社調べによると年率15%の高い成長率を維持し、2009年には3000億円マーケットになると見られている。キヤノンの事業ドメインをこの成長市場に向けるべく、今回の本格参入に至ったと述べ、自信を見せた。
imagePRESSに投入した新技術。印刷エンジン周りには“iPRコントローラ”チップを新開発して搭載 | ローラーとベルト、ドラム部分の制御によって紙種によらない高速印刷を実現したという |
具体的には、
- 同社のSoC(システムオンチップ)技術を投入して“iPRコントローラ”を新規開発し、高速印刷を実現
- 大量印刷や異なる用紙への印刷においても色むら/濃度変化が起こらないよう、平均5.5μmの粉砕型微粒子トナー“Vトナー”と現像システム“Tキャリア”を開発。印刷プロセス技術も改良して、オフセット印刷と同等レベルの色域をカバー
- ベルトとローラーの温度を用紙に合わせて可変にしたり、ドラムの定着動作を制御することにより、用紙種別に依らずトップスピードの毎分70枚印刷(C7000VP)を実現
- 用紙の凹凸に合わせて柔軟に対応できる“弾性中間転写ベルトシステム”を開発・搭載
などの技術を新たに投入したという。
中間転写ベルトには、弾力のある新素材のベルトを用意して、紙の表面の凹凸に対応 | 印刷結果の自動製本もオプションで用意 |
一方、Color imageRUNNERのオフィス用MFPは年々カラー化が進んでいるものの、出荷台数の合計は横ばいが続いている。ここには今回、セキュリティー機能を強化して付加価値による新規市場の開拓を目指すとしている。
具体的には、Color imageRUNNERのハイエンド機で初のタンデム方式を採用したほか、改良型画像処理エンジンの搭載、定着システムの改良による高速化、1200dpi相当の高解像度印刷対応など、印刷速度と画質の両面で改善を図っている。さらに、
- 電子署名付きPDFの作成
- スキャン結果に電子証明書とタイムスタンプを発行したPDF文書を自動作成するため、その出力がそのまま公的電子文書として通用。これは業界初という
- WebDAVプロトコルに対応
- 印刷するユーザーの個人認証と連携して、スキャン結果の柔軟な集配信が可能
- アウトラインPDFの作成に対応
- アウトラインをベクター画像で生成し、拡大や変形してもジャギーが目立たないアウトライン抽出した画像出力が可能
- 機密管理フローの充実
- 個人認証による機能制限、コピー抑止(カラーの全面地紋印刷)、情報漏洩追跡ソフトの追加
などの特徴を備えるという。
電子署名付きPDFの作成機能を搭載 | インターネット連携機能により、スキャン結果のメール配信や閲覧・印刷実行などがパソコンレスで行なえる |
なお、今秋にはこれら業務用プリンターを実際に設置して商談を行なうための“プロダクションシステムセンター”を品川のキヤノンオフィス内(6F)に開設。その後、順次全国6ヵ所に展開する予定があるという。