米ボーイング(Boeing)社のコネクション・バイ・ボーイング(Connexion by Boeing)部門は4日、都内で記者会見を開き、同社が全世界で展開している旅客機内でのブロードバンド接続サービスの現状に関して説明した。
メディアリレーションズディレクターのテランス・スコット氏 |
コネクション・バイ・ボーイング部門は2000年11月に設立され、民間航空機部門や統合防衛システム部門などに続く、第4のビジネスユニットとなっている。同社が提供する“Connexion by Boeing”は、通信衛星を利用した機内向けのインターネット接続サービスで、2004年5月から商用サービスを開始。現在ではドイツ ルフトハンザ航空社、日本航空(株)(JAL)、全日本空輸(株)(ANA)など13の航空会社が、毎日合計130~150路線でConnexion by Boeingを利用したサービスを提供している。
機内では無線LAN(IEEE 802.11a/b/g)のほか、有線LAN(イーサーネット)を利用した接続も可能で、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(株)の“HOTSPOT”や(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモの“Mzone”とのローミングにも対応する。通信速度は衛星から旅客機までが約5Mbps、衛星から地上までが最大1Mbps。将来的には高画質な動画配信なども視野に入れた20Mbpsの通信にも対応していく計画だという。
ボーイングは航空会社の飛行機に、受信用アンテナ、データトランシーバーとルーター、サーバー、無線LANアクセスポイントといった機材の設置や運用を担当する。また、インターネット経由で各種サービスを提供する地上施設も運用しており、搭載機の状態をトラッキングしたり、VPNを利用した企業ネットワークへの接続サービス(とセキュリティー管理)などもサポートする。航空機だけでなく、今後は船舶などへの応用も行なっていく予定。
機内での携帯電話サービス提供に意欲
会見には、メディアリレーションズ ディレクターのテランス・スコット(Terrance Scott)氏、カスタマー&リレーションシップマーケティング ディレクターのブルック・エイドサウン(Brooke Eidsaune)氏などが出席。サービスの現状と今後の展開に関して説明した。
会見の中でスコット氏は、飛行機内での携帯電話利用サービスについて言及した。サービス開始には各国の法規制をクリアーする必要があるものの、ヨーロッパ(2006年後半)を手始めに、米国(2007年)やアジア諸国(2007~2008年)にサービス範囲を広げていく考え。まずは全世界的に普及しているGSM規格の音声通話とSMS(ショートメッセージサービス)をサポートし、その後海外市場で人気のEメール端末『BlackBerry』などで利用されているGPRSや3G携帯電話機などに対応していく。
閉鎖された機内では音声通話の利用マナーも問題になるが、これには飛行機の運行時間のうち音声通話を制限する時間帯を制限する(発着の前後1時間だけ音声通話可能として、機内で睡眠を取る乗客の妨げにならないようにするなど)といった利用ポリシーを航空会社が選択できるようにすることで対処する。携帯電話機と飛行機無線の干渉に関しては、すでに25回線の同時通話と3G携帯電話機のデータ通信、SMS(ショートメッセージ)の送受信を同時に行なうテストなどを実施しており、安全性の面で問題は感じていないという。
またスコット氏は、Connexionサービスと同時に提供されているポータルサービス“Air Portal”を、パソコンだけではなく機内のシートに据え付けられたディスプレーなど幅広い機器で利用できるようにしていく方針を持っていることも明らかにした。
ボーイングでは、AirPortal上で放送されているニュース番組“Connexion TV”(現在4チャンネル)を2006年前半までに、座席のディスプレー上で視聴できるようにするほか、スポーツコンテンツなどチャンネル数の拡大やワイヤレスキーボードと組み合わせてゲームコンテンツなどを楽しめるようにしていく。また機内サーバーの機能も拡張し、2006年後半から音楽配信用のストリーミング配信、2007年以降は動画配信も行なえるようにする。