日本HPとミントウェーブ、モバイル環境と企業内情報漏えいの防止を両立する新セキュリティー・ソリューションを発表――ノート型シンクライアント端末などを提供
2005年01月18日 23時39分更新
日本ヒューレット・パッカード(株)(以下日本HP)とミントウェーブ(株)は18日、モバイル環境と企業内情報漏えいの防止を両立する新セキュリティー・ソリューションとして、シンクライアント・システムを中心としたソリューションの提供を開始すると発表した。日本HPは、同ソリューションのコンサルティングや導入/保守サポート、シンクライアント・システム用のサーバー製品を、ミントウェーブは日本HPのノートパソコン既存製品をベースとしたクライアント端末の提供をそれぞれ行なう。
この日に行なわれた記者説明会でデモンストレーションに使用されたシンクライアント端末。日本HPのノートパソコンをベースとした製品 |
このシステムでは、ユーザーは、ネットワークを介してサーバーの“MetaFrame”上でアプリケーションやファイルを利用する。ユーザーごとにアクセスなどの権限を設定することが可能で、アプリケーションやファイルの使用だけでなく、ユーザーによる文書の保存、クリップボードを介したコピー/ペースト、印刷などの機能についても使用が制限できる。クライアント端末はHDDを持たず(デスクトップなどにファイルを保存しても、電源を切断してしまえばデータは失われる)、USBポートなどを介して接続した外部ストレージへのファイル保存も制御できるため、データの不正な持ち出しや、モバイル端末の盗難/紛失などによる情報の漏えいが防げるとしている。
現時点で発表されている端末『MiNT-ACC Note 320』は、日本HPの『HP Compaq Notebook nx9040』をベースとしたもので、CPUにCeleron M 320-1.30GHz、チップセットにIntel 855GMを採用し、CD-ROMドライブ、15インチ液晶ディスプレー(1024×768ドット/1677万色表示)などを搭載する。HDDは持たず、OSは内蔵のフラッシュメモリーに格納される。クライアント端末の価格はオープンプライスで、編集部による予想実売価格は13万円前後から。なお、案件ごとの対応として、各クライアント端末に導入するWindows XP Embeddedのカスタマイズも可能だという。
マーケティング統括本部アライアンスマーケティング本部の福田健治氏 |
この日行なわれた記者説明会の冒頭に挨拶を行なった、マーケティング統括本部アライアンスマーケティング本部の福田健治氏は、個人対策保護法の施行が近づき、企業のセキュリティーに対する取り組みは急速に拡大しているが、「インターネットでセキュリティーの話題がホットでなかったことはない」と述べ、法令にかかわらず、ネットワークを利用する上ではセキュリティー対策は重要であると強調。さらに、「個人情報保護“法”対策を焦っている企業も多い」とも述べ、法令を意識するあまり、実際のIT運用に悪影響が出るような極端な対策を採る例も一部にあるとした。
また、今回発表したシンクライアント・システムを利用したセキュリティー・ソリューションについては、「ポータブルな端末を利用した、機密の漏えいを完全に防ぐ製品」と紹介。過去にミントウェーブと協同で対応した案件がその前身となっているといい、当時は特記的な案件として応じたものを、汎用化して製品化したものだと述べた。
コンサルティング&インテグレーション統括本部、クロスインダストリ・ソリューション本部 ネットワークシステム本部 セキュリティーソリューション部の栗田晴彦氏 | セキュリティー対策が必要な企業内システムの各種レイヤー |
続いて登壇したコンサルティング&インテグレーション統括本部、クロスインダストリ・ソリューション本部 ネットワークシステム本部 セキュリティーソリューション部の栗田晴彦氏は、セキュリティー対策や指針、個人情報保護法対応を含めた最新動向について解説。同氏によると、同社は2004年8月に個人情報保護を目的とした包括的セキュリティーソリューションを発表し、すでに製品の販売も開始しているという。しかし「セキュリティー対策も多岐にわたる」とも述べ、より多くのレイヤーでのセキュリティー対策が必要だとした。今回発表したソリューションは、「内部の脅威に対する非常に有効なソリューション」だといい、個人情報保護対策の重要課題のひとつである“企業内部からの情報漏えい”に対抗する製品だと位置付けた。
経済産業省が示した個人情報保護対策のガイドラインとそれに対応するソリューション/技術 | 内部および外部の脅威の違い |
エンタープライズ ストレージ・サーバ統括本部、インダストリー スタンダード サーバ製品本部プロダクトマーケティング部の池亀正和氏 | “MetaFrame”にログインした直後の画面の2種類の例。左右でログインユーザーIDが異なり、それぞれに与えられた権限で利用できるアプリケーション、ファイルが違っている |
“MetaFrame”を活用したセキュリティー対策や今回のシンクライアント・システムの概要説明やデモンストレーションを行なったエンタープライズ ストレージ・サーバ統括本部、インダストリー スタンダード サーバ製品本部プロダクトマーケティング部の池亀正和氏は、まず最初に同社の考えるセキュリティー対策の方向性について「セキュリティーを追求していくと最終的には“見せない”というところまで行ってしまうが、実際にはそれでは支障が生じる。0と1の間のところを提供していかなければならない」と述べ、IT運用に極端な機動性の低下などの悪影響を与えないソリューションとして、今回発表されたソリューションを紹介した。
“MetaFrame”を活用した、セキュリティーの堅牢なネットワーク環境の混在例 |
また、前述したシンクライアントを利用することによるアプリケーションや文書の利用制限に加え、企業におけるインターネット接続環境と基幹システムネットワーク環境の混在時のセキュリティー対策としてのシンクライアント活用についても触れ、インターネット接続に“MetaFrame”を介することにより、クライアント環境に悪意のあるデータが直接流れ込むことを遮断する方策や、“MetaFrame”を介して基幹システムネットワークとインターネットに接続することにより、システム管理者に制御しやすいより堅牢なセキュリティーを維持した状態での混在環境を実現する例なども示している。なお、今回のソリューションを運用するサーバーについて池亀氏は「2Wayクラスのサーバーを(規模に応じて)並べていくのがいい」とし、この前日に説明会が行なわれた“BladeSystem”は最適なサーバー環境だと述べた。
この日の記者説明会には、パートナー企業として、ミントウェーブ、マイクロソフト、シトリックス・システムズ・ジャパンの代表者も出席。今回発表されたソリューションに盛り込まれた技術、製品などについての解説を行なった。
ミントウェーブの営業部営業グループ課長の岸克政氏 | 機密情報のサーバー一元管理とシンクライアントにより、セキュアなインフラを実現し、ミントウェーブと日本HPの協業により「日本マーケットで新しいクライアント環境の提案を行なっていく」と述べた |
マイクロソフトのモバイル&エンベデッドデバイス本部シニアプロダクトマネージャの石川大路氏 | Windows XP Embeddedの特徴 |
シトリックス・システムズ・ジャパン、マーケティング本部本部長の樋渡純一氏。シンクライアントを核としたシステムは「セキュリティー対策以外だけでなく、災害時のディザスタリカバリーにも有効」と説明 |