ユーリード、2005年の製品戦略と画像編集ソフト『PhotoImpact 10』の製品発表会を開催――「我慢である2005年、2006年への挑戦」
2005年01月13日 20時27分更新
ユーリードシステムズ(株)は13日、東京・用賀の同社オフィスにプレス関係者を集め、2005年の製品戦略と、足掛け3年ぶりとなる画像処理ソフトの最新版『PhotoImpact(フォトインパクト) 10』の製品発表を兼ねた記者説明会を開催した。PhotoImpact 10は2月11日発売予定で、価格は通常版が1万5540円、乗り換え/アップグレード版が1万290円、アカデミック版は8190円、プログラムCD-ROMとオフィシャルガイドブック、チュートリアルDVD-Videoを1パッケージにした“入門セット”は1万8690円(入門セットのみ4月8日発売予定)。
代表取締役社長に就任したピーター・リン氏 |
説明会には、昨年11月1日付けで代表取締役社長に就任したピーター・リン(林志中)氏、台湾ユーリードシステムズ(Ulead Systems)社のマーケティングコミュニケーション部のデイビッド・マーティン(David Martin)氏らが出席し、リン氏は2005年の製品戦略を、マーティン氏はPhotoImpact 10の新機能をそれぞれ説明した。
自社販売の売上推移 | OEM売上の推移 | 両者の合計による売上額の推移 | ||
ユーリードシステムズの売上額の推移 |
最初に挨拶したリン氏は、「我慢である2005年」と切り出し、2004年を振り返りながら改めて我慢=技術開発の重要性を訴えた。リン氏は「2004年は同社の主力製品である『Ulead VideoStudio(ビデオスタジオ) 8』『Ulead DVD MovieWriter(ムービーライター) 3』をはじめとした映像製品ばかり5タイトルを出荷したが、これはここ数年で最も少ないタイトル数であり(例年は10タイトル以上)、画像編集ソフトの新製品は1本も出なかった。しかし、売上で見ると過去最高の9億円(自社販売)/6億円(OEM販売)の合計15億円ほどに達する見込みで、本数こそ少ないものの過去最高の売上とUleadグループ全体でも3年連続の売上No.1を達成する」と2004年を振り返った。
そして、2005年については「改めて技術開発の重要性を認識し、現在のUlead製品が抱えている欠点をひとつずつ克服していく必要がある」と神妙な面持ちで語った。それによると、自社製品の欠点として
- プログラムの膨大化
- ⇒起動時間の遅さなどがユーザーの不満につながる
- 製品連携の弱さ
- ⇒ほかのアプリで作成した独自形式のファイルが読み込めないなど互換性がない
- “簡単”の再定義が必要
- ⇒新技術の投入に入れ込みすぎて、機能が多様化・複雑化しすぎている
- ユーザーが本当に使いたい機能を使いやすく
- ⇒開発者の思いいれが強くなりすぎて、機能を詰め込みすぎてしまう
の4つを挙げた。そして、これらを解消するべく
- プログラム全体の最適化
- 共通モジュールの強化
- ユーザーの使用習慣を念頭に入れて開発
- ユーザーが本当に使いたい機能を最優先に開発
などを実践していくと目標を示した。
メディアサーバーとなる新たな柱を2005年に育て上げるというが、具体的な内容は明かされなかった | 2005年中に実施する、2006年への準備項目 |
具体的な製品のロードマップについては明かされなかったが、話の中で2005年の同社の動きとしては、
- 既存製品をバージョンアップしていく
- 製品数は2004年と同程度か少ないが、共通して16:9のワイドアスペクトをサポートする
- 説明書を読まなくても使える製品を出荷する
- 画像入力装置(デジタルカメラ/DVカムコーダー/DVDレコーダーなど)は非常に扱いやすくなったので、今度は出力(編集結果をDVDなどに記録)することを簡単にする
- 第3の柱を立てる
- VideoStudio 8/Ulead MovieWriter 3に続く第3の主力商品を育てる。メディアサーバー的な位置づけとして、画像入力から出力(再生)までのソリューションを提案していく
- 2006年への準備を進める
- H.264/VC1/MPEG-2などのCODEC開発、UDF 2.5の記録フォーマットのサポート、再生ソフトというハイビジョン映像に対応するための技術開発、ならびに64bit CPUやOSに対応するための64bit対応アプリケーションの開発、次世代DVD規格への対応(HD DVD、Blu-ray Discとも)
などを明らかにした。
台湾ユーリードシステムズ社のマーケティングコミュニケーション部のデイビッド・マーティン氏 |
次にマーティン氏が、2002年10月に発表した『Ulead PhotoImpact 8』以来のバージョンアップとなる、PhotoImpact 10の特徴的な機能についてデモンストレーションを交えて説明した。
ユーザーインターフェースの違い。こちらは初心者向けの“簡易モード”で、アイコンが大きく表示される | 中級者以上向けの“拡張モード” |
PhotoImpactシリーズは、ミッドレンジ以上のデジタルカメラを利用して撮影結果にこだわりを持つが、パソコンの操作はなるべく簡単に済ませたい方、あるいは画像編集を仕事にしておりなるべく少ない手順で画像処理を行ないたい方などをターゲットにした画像編集ソフト。PhotoImpact 10では、
- ユーザーインターフェースの改良
- 初心者が迷わずに使える“簡易モード”と、中級者以上に使いやすい“拡張モード”を装備。さらにツールウィンドウなどを一度に閉じて、編集作業のスペースを広げる機能を追加
- “イージーパレット”の搭載
- 2600種類に及ぶエフェクトを系統別に分類したツールパレットで、編集中の画像に適用した場合のプレビューを見ながら、目的のエフェクトを探し出せるほか、大量の画像に同じエフェクトをかける場合には、最大50工程までの編集操作を記録・再生することが可能
- 髪の毛1本単位の切り抜きが可能な“オブジェクト抽出機能”の搭載
- テキストデザイン機能を強化
- フォントの縁取りや変形、加工が可能になり、ロゴデザインにも利用可能
- “美肌補正ツール”の追加
- コピー元の色情報/質感のどちらをどれくらい重み付けするか指定してコピーできる新たなクローンコピー機能を搭載。にきびやシワの補正(消去)など、写真の美肌編集に利用可能
- HDR(ハイダイナミックレンジ)機能の強化
- 露出設定を失敗して明るすぎ/暗すぎに写ったデータを自然な映像に加工するほか、最近のデジタルカメラに搭載されているブラケット撮影(露出を3段階程度切り替えて同じ構図から写す機能)したデータから、全体の露出を最適化した画像を作り出す機能を追加。さらに、比較する撮影結果の中に不要な被写体(鳥や歩行者など)があっても、それを除いて加工する機能を搭載
などが新たに搭載された。これらは主にユーザーコミュニティーからの意見を吸い上げて機能強化したものだという。
こちらは初期状態で、エフェクトが標準搭載のサンプルで表示されている | イージーパレットのアイコンを押すと、編集中の画像を使ったエフェクト結果がサムネール(プレビュー)表示される | |
イージーパレットの例 |
1人で同じ構図から異なる場所に移動して撮影し、その結果を1枚に合成したところ。独り会議状態だという。よく見れば、ガラスに映った顔や腕も抽出されて自然に合成されていることがわかる | 犬のふさふさの毛も切り抜かれ、背景の空と自然に重ね合わせられている | ユーリードが自社で行なった切抜きの比較。手順、操作時間ともに競合製品を大幅に短縮できると説明 | ||
オブジェクト抽出を使った例 |
露出を変えて連続撮影する“ブラケット撮影”では、まれにカメラの前を横切る“余計な被写体”が紛れ込む場合もある | そんなときには、不要な部分をペンで塗りつぶしてからHDRで自動処理する | すると、明るい外(奥の緑)も、暗い建物の中(右上の階段や扉の内側)も明るさが自動的に最適化される | ||
HDRを使った例 |
動作環境は、対応OSがWindows 98 SE/Me/2000/XP、CPUはPentium III以上、メモリー128MB以上(256MB以上を推奨)、HDD 600MB以上など。対応フォーマットはBMP/GIF/JPG/PCT/TIFなど39種類。ただし、RAWデータの現像については非対応。これはRAWデータで記録するユーザーはまだ少ないと判断したからだという。パッケージには、PhotoImpact 10本体のほか、検索機能付きの画像管理ソフト『PhotoImpactAlbum(フォトインパクトアルバム)』、GIFアニメーション作成ソフト『GIF Animator 5』、360度パノラマ映像を作成する『COOL360』、画像と動画、音楽などのマルチメディアデータを一括管理する『PhotoExplorer8.5』の4つのユーティリティーソフトが付属する。
『Ulead PhotoImpact 10』のパッケージ |