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ソフトバンクと米アカマイ、合弁で“アカマイ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社”を設立

2001年04月12日 01時46分更新

文● 編集部 佐々木千之

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ソフトバンク・ブロードメディア(株)、米アカマイ・テクノロジーズ社、ソフトバンク・テクノロジー・ホールディング(株)の3社は11日、都内で新事業説明会を開催し、インターネットコンテンツ配信の高速化サービスを提供する合弁会社“アカマイ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社”を4月に設立すると発表した。

ソフトバンク・ブロードメディア(株)、米アカマイ・テクノロジーズ社、ソフトバンク・テクノロジー・ホールディング(株)の3社は11日、都内で新事業説明会を開催し、インターネットコンテンツ配信の高速化サービスを提供する合弁会社“アカマイ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社”を4月に設立して、国内でサービスを提供開始すると発表した。

アカマイ・テクノロジーズ・ジャパン代表取締役社長の橋本太郎氏
アカマイ・テクノロジーズ・ジャパン代表取締役社長の橋本太郎氏

新会社アカマイ・テクノロジーズ・ジャパン(以下アカマイジャパン)は、本社を東京都中央区に置き、資本金は4億5000万円で、ソフトバンク・ブロードメディアが55%、米アカマイが40%、ソフトバンク・テクノロジー・ホールディングスが5%の割合で出資する。代表取締役社長はソフトバンク・ブロードメディア代表取締役社長の橋本太郎氏が兼任する。

橋本氏によると、アカマイジャパンが提供するサービス“Akamai”は、米アカマイが開発した、コンテンツ配信の最適化システムや、全世界に1万台弱のサーバーを配置し、ネットワークで相互に接続してコンテンツのキャッシングを行なうシステムなどで構成されている。インターネットコンテンツの負荷分散、高速化サービスとして定評があり、米ヤフー、米CNN.COMといった著名なコンテンツサイトで利用されており、この分野で世界1のシェアを持つとしている。

国内で提供する具体的なサービスには以下の4つがある。

  • FreeFlow
  • FreeFlow Streaming
  • EdgeSuite
  • Akamai Forum
FreeFlowの概要
FreeFlowの概要
FreeFlow Streamingの概要
FreeFlow Streamingの概要。ストリーミングデータがパケットごとに別々のサーバーから送信されるのが特徴

FreeFlowは、Akamaiサービスの基本となるもので、ユーザーからのリクエストに対して、最もユーザーに近いAkamaiサーバーからコンテンツを配信する仕組みで、2~20倍のパフォーマンス向上、アクセス集中時のアクセスへの対応、インフラコストの削減が図れるという。FreeFlow Streamingは、FreeFlowの仕組みをストリーミングコンテンツに拡張したもので、Windows Media Technology、QuickTime、Realのフォーマットに対応し、全世界からの50万ユーザーによる同時アクセスをサポートする。EdgeSuiteは、株価情報など動的コンテンツを含んだり、クッキーを使ってパーソナライズされたりしたウェブサイトをサポートするもの。最後のAkamai Forumは、インターネットを通じたセミナーや発表会といった、インタラクティブなコンテンツを含むストリーミングメディアをサポートした、オンラインイベントサービス。これらのサービスの価格については現在検討中としている。

EdgeSuiteの概要
EdgeSuiteの概要。HTMLをユーザーごとに生成するような動的コンテンツにも対応する

橋本氏は、Akamaiサービスの利点として、アカマイのネットワークに接続することが、即、世界的なサービスを提供することになることや、コンテンツ提供側のネットワークやハードウェアに依存せず、キャッシュや負荷分散システムまでも含んだサービスであること、トラフィック集中によるサーバーダウンを回避できることなどを強調した。また米マイクロソフト社のウェブサイトが、1月にインターネットからの攻撃を受けてダウンした後、米アカマイと契約して、攻撃対象となったDNSサーバーの分散化によるセキュリティー対策を講じたことや、先の米大統領選挙がもつれた際、Akamaiサービスを受けていたニュースサイトでは大量のアクセス集中にもかかわらず平常に運営が行なえたことが紹介された。

ソフトバンク(株)代表取締役の孫正義氏
ソフトバンク(株)代表取締役の孫正義氏

発表会で挨拶した、ソフトバンク(株)代表取締役の孫正義氏は「アカマイの日本進出によってやっと日本のインターネットも欧米並みになる。先日もワールドカップサッカーのチケット予約サイトがアクセス集中でダウンしたが、アカマイのサービスを受けていれば落ちずに済んだだろう。“アカマイズ(アカマイ化)”によって、コスト、スピード、スケーラビリティーの点で日本のウェブサイトが向上する。ソフトバンクグループのウェブサイトも、ぜひアカマイズしていきたい。これからブロードバンドの普及をにらんでリッチなコンテンツがたくさん出てくるが、アカマイズすることによってそうしたコンテンツがスムーズに提供できる。今回の合弁会社設立はたいへん嬉しく、また期待もしている」と述べた。

米アカマイ会長兼CEOのジョージ・コンレイデス氏
米アカマイ会長兼CEOのジョージ・コンレイデス氏

米アカマイ会長兼CEOのジョージ・コンレイデス(George Conrades)氏は「アカマイは現在欧米に3600サイトの顧客を持ち、56ヵ国に約1万のサーバーを設置してそれらを650以上のネットワークによって接続している。現在、毎週100サーバーと1つのネットワークの割で増加しており、日本にもすでに300のサーバーを設置している。アカマイは顧客にとってインターネットを安価なコストで効率よく利用できるサービスを提供している。アカマイジャパンによって日本の顧客のコンテンツが世界に提供できるよう手伝いたい」とした。

米アカマイの設立者の1人で副社長のジョナサン・シーリグ(Jonathan Seelig)氏
米アカマイの設立者の1人で副社長のジョナサン・シーリグ氏

また米アカマイの設立者の1人で副社長のジョナサン・シーリグ(Jonathan Seelig)氏は「アカマイは当初10サーバーでサービスを開始した。利用する顧客が増えることでサーバーが増加し、接続するネットワークも広がった。するとよりグローバルなサービスが提供できるようになって、サービスの魅力が増し、さらに顧客が増加するという“プラスのサイクル”でここまで成長してきた。日本はコンシューマー向けISPが多く、ブロードバンドプロバイダーもどんどん増えつつある。さらにほかの国に類を見ないワイヤレスインターネットの普及状況もある。アカマイのサービスは日本のコンテンツプロバイダーが求めているものを提供できるはず」とアカマイのサービスが受け入れられることに自信を見せた。

“アカマイを選ぶ理由”
橋本氏が示した、“アカマイを選ぶ理由”

これまで日本におけるコンテンツ配信の高速化といえば、一部のストリーミングデータの配信サービスを除けば、ウェブサーバーの多重化や負荷分散装置、キャッシュサーバーの設置といったように、コンテンツプロバイダー自身が行なう場合が多かった。しかしこうした対応では、予想を遙かに上回る急激なアクセス集中や、アメリカなど日本と太い回線で結ばれている国以外からのアクセスに対して、効果がなかったり素早い対応が難しかったりした。また、これらにすべて対応しようとすると膨大なコストもかかることになる。先のワールドカップサッカーのチケット予約サイトや、2000年末のインパク初日における、アクセス集中によるサービス停止などという事態は、さらにインターネットが普及し、あるいは携帯電話によるアクセスが増加することで、いっそう起きやすくなることが予想される。

まだサービス価格が提示されていない段階ではあるが、アカマイのサービスが額面通りならば、コンテンツプロバイダーが1社ではとうてい構築できない大規模な配信システムがリーズナブルに利用できることになる。アカマイジャパンはインフラ事業者、ISP事業者、ホスティング事業者との競合は避け、それら事業者とのパートナーシップを基本としてサービスを展開するとしており、発表会にも多数の事業者を招いた。欧米での運用実績を背景に、日本でもアカマイズされたコンテンツプロバイダーが一気に増えることになりそうな気配だ。

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