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“Amazon.co.jp”発表会詳報――「Amazonはすでに日本市場でナンバーワンのインターネット書店」とベゾス会長

2000年11月01日 23時34分更新

文● 編集部 佐々木千之

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米アマゾン・ドット・コム社は1日、イギリス、ドイツ、フランスに次ぐ米国外4番目の書籍販売サイトとして“Amazon.co.jp”をオープンするにあたり記者発表会を開催した。主なサービス内容については既報したが、ジェフ・ベゾス(Jeffrey Bezos)会長の発言を中心に、発表会の詳細について紹介する。

(左から)米アマゾン・ドット・コムのインターナショナルシニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのディエゴ・ピアチェンティーニ(Diego Piacentini)氏、CEOのジェフ・ベゾス氏、アマゾン ジャパン代表取締役社長の長谷川純一氏

発表会は、まず米アマゾンの創業者でCEOのベゾス氏がAmazon.co.jpの意義についてスピーチし、その後米アマゾンの日本法人であるアマゾン ジャパン(株)(※1)代表取締役社長の長谷川純一氏がAmazon.co.jpで行なうサービスの詳細について説明する形で行なわれた。

※1 アマゾン ジャパン(株)は'98年秋に設立されている。また代表取締役社長の長谷川純一氏は、ことし2月に現職に就任した。長谷川氏は、'83年の大学卒業後にニチメン(株)とその関連会社でハイテク事業の立ち上げに関わり、その後国際電気通信基礎技術研究所に勤務、'91年にマサチューセッツ工科大学で経営科学修士号(MBA)を取得した。その後'96年にピープルソフト ジャパン(株)を共同で設立、アマゾン ジャパン入社までピープルソフトにおいてERPシステムに関わっていた。

“世界で1番顧客サービスの良い会社”を目指す

司会者の紹介に、満面の笑みを浮かべながら登場したベゾス氏は、簡単な挨拶の後、Amazon.comの設立時のエピソードから話し始めた。

「'95年にAmazon.com(サイト)をオープンしたが、サイトを作っているときは僕らも本当にみんなが回に来てくれるか不安があった。しかし、公開後の30日間で45ヵ国から注文を受けることができた。オープン後すぐに日本からの注文もあり、1ヵ月後日本のユーザーは米国外からの最大の顧客になった。'97年にAmazon.comの100万人目の顧客となったのもホシノという日本人だった。

日本に書籍を送るには送料も(米国内より)高く、届くまで6週間もかかるのに、すでにAmazon.comは日本で19万3000人の顧客がおり、年間の売り上げは3400万ドル(約36億8000万円)に達する。これは日本の他のどのEコマースサイトと比べてもナンバーワンだ。」と英語版のサービスであっても、すでに日本市場でトップであることを強調した。

さらにベゾス氏はソニーを引き合いに出し「私はソニーを見習いたいと思っている。ソニーはかつて、製品の品質を重視し、ソニー製品が品質の高さで有名になること、ひいては日本の製品が品質で知られるようになることを目指したという。そしてそれは現実のものとなった。私はAmazon.comを世界で1番優れた顧客サービスを行なう会社にしようと思っている。そして他社のサービスの規範となりたい」と述べて挨拶を締めくくった。

Amazon.comで培ったノウハウをすべてco.jpにもつぎ込む

続いて長谷川氏が日本でのサービスの詳細について説明した。それによれば、Amazon.co.jpの日本での展開においては、東京・渋谷にマーケティングやITサポート、仕入れなどを行なうオフィスを、千葉県市川市に1万6000平方メートルの配送センターを設置する。また2001年1月には、北海道札幌市にカスタマーサポートセンターを開設するとしている。

Amazon.co.jpではAmazon.comと同じシステムで運営され、Amazon.com同様のサービスを提供するとしている。書籍の紹介文では、Amazon.co.jp専属ライターや編集者のレビューを掲載、Amazon.comでのレビューの翻訳も掲載する。また(株)メディアファクトリーの本の情報誌“ダ・ヴィンチ”と提携して毎月150冊のレビュー、(株)ブックレビューとも提携し、ビジネス・経済関連書籍のレビューも掲載するとしている。Amazon.comで人気の高い、ユーザーの投稿レビューや、Amazon.co.jpの顧客同士で金券として利用できる“Amazonギフト券”も提供する。

Amazon.co.jpが取り扱う書籍は和書110万点、洋書60万点の計170万点としているが、この和書の数字中にはAmazon.co.jp自身が在庫を持たないものも含まれる。Amazon.co.jpが持つ和書の在庫は6、70万点で、それ以外の書籍については出版社や大手取次業者などからの取り寄せとなる。

配送は日本通運(株)の宅配便“ペリカン便”を利用するが、年内の配送については送料を無料とするサービスを展開する。なお、来年以降については「有料とするか無料サービスを続けるかといったことも含め検討中で、改めてアナウンスを行なう」(アマゾン ジャパンPRマネージャーの稲吉氏)という。

Amazon.comにおいては、書籍以外に玩具、CD、DVD、ゲーム、クルマ、キッチン用品なども扱う総合Eコマースサイトになっているが、日本では音楽とビデオを検討中だが、時期についてはまだ公表の段階にないとしている。

発表会の終わりに質疑応答の時間となった。記者から「日本ではすでに何社も書籍販売のサービスがスタートしているが、いつナンバーワンになると思うか」という質問が出たが、「述べたように19万3000人もの顧客を抱えており。すでにナンバーワンだ。この地位を保てるように努力していきたい。大きな市場なので勝ち組みがいくつかあってもいいのではないか」(ベゾス氏)と自信を見せた。また、株価が下がったことについてのコメントを求められたが、これには「確かに年初の株価の3分の1になっているが、3年前に公開したときから見れば20倍くらいにはなっている。米国ではここ6ヵ月ハイテク株を中心に下落しているが、2000年のいまが市場による正常な評価であって、'99年の市場があまりにも常軌を逸していた」という見解を披露した。

オンライン書籍販売では、(株)紀伊國屋書店、(株)八重洲ブックセンター、(株)三省堂書店などの国内書店系に加え、(株)セブン-イレブン・ジャパンと日本電気(株)、ソニー(株)らが設立した(株)セブンドリーム・ドットコム、ヤマト運輸(株)の“クロネコヤマトのブックサービス”、さらにドイツのベルテルスマングループが出資するBOLジャパン(株)の“bol.com”など、非常に多くのサービスが乱立している。すでに20万人弱の顧客を抱え、サービスに定評のあるAmazon.comが本格的に日本に進出することで、すぐに淘汰の時代にはいるとは思えないが、先行他社はサービスの差別化などなんらかの手を打つ必要が出てくるだろう。先行投資があまりに大きいために、売り上げも伸びるが赤字も増え続け、米国では株主やアナリストから批判されているアマゾンだが、Amazon.co.jpのオープンは、少なくとも日本市場において、オンライン書籍販売の市場や、サービスの質に大きな影響を与えるきっかけとなることは間違いないところだ。

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