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【アルス・エレクトロニカ・フェスティバル2000 Vol.8】インターネットはXXXフェチを救う!?(“NEXT SEX シンポジウム”より)

2000年10月02日 21時20分更新

文● 岡田智博 coolstates.com

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世界最大の電子メディアアートのフェスティバル“アルス・エレクトロニカ”にはもうひとつの顔がある。最先端の科学技術や文化領域から第一人者を招いて、フェスティバルのテーマについて討論するシンポジウムの存在である。“NEXT SEX” という難しいテーマでありながら、今回もたくさんの個性的な発言が飛び出した。本稿では特にインターネット時代の“NEXT SEX”を髣髴(ほうふつ)させる発言をピックアップしてお届けしたい。

“すべてのDNAをバイナリーコードにするとミルキーウエイ(天の川)のように視覚化できる”――そう語るジェネティックアートの第一人者(Vol3参照)が、塩基配列を積み木細工のように組み合わせるデモンストレーションをしたかと思えば、一方では「レイプは自然な行為である」と発言し、会場全体に怒号の渦を巻き起こしたランディ・トーンヒル氏(ニューメキシコ大学教授)のような自然科学者も登場した。

まさにバラエティーに富んだ18組の発言者が壇上に立ったシンポジウムだった。その中で、インターネット時代の“NEXT SEX”を語ったのは、メディアアクティビストのセルジオ・メッシーナ氏(イタリア)と、パリ・ソルボンヌ大生から転進したナターシャ・メリット氏(米国)であった。

インターネットはXXXフェチを救う!?

「インターネットは孤独な性を開放した」と語るのはセルジオ・メッシーナ氏だ。現在、インターネット上で展開されている様々な性の表現を収集、探求に明け暮れている。インターネットの開放によって、様々な性嗜好を持った人々が「こんなことをしているのは私ひとりだけではなかった、もはや孤独ではないのだ」という連帯意識を持てるようになった。特別な性嗜好を持った人々のコミュニティーが地球規模で生まれ、そのことによって独特の性嗜好をかかえて孤独感を感じてきた人々が開放されたのだ。

セルジオ・メッシーナ氏。もはや孤独ではないのだ

“靴下フェチ”に、“靴フェチ”、“足フェチ”に“ストッキング・フェチ”などなど、様々な性嗜好サイトとそのイメージを見せながら、現在の地球上全体のWebトラフィックの8割近くがその種のものによると指摘。

「インターネットで最も巨大なコミュニティーは性嗜好コミュニティー。この存在の大きさはインターネットの開放以降も変わらず広がっている」と語る。そして「インターネットによる、地球規模での性嗜好情報の交換とコラボレーションが更に新しい性嗜好のかたちを創造し、未曾有の性文化時代に突入したのだ!」と言い放つのであった。

収集した画像はブルックナーハウス内に設置された専用端末に収められていた。特別にあつらえた怪しい形状のソファーに腰掛けながら、フェスティバルの期間中思うまま閲覧できるようになっていた。

メッシーナ氏の収集画像を特設端末で楽しむ(モザイク部分はディエテール・フーバー氏による局部接写を用いたフォトインスタレーションの一部)

「私らしく、私らしい」瞬間を収めた“プライベートダイアリー”

デジタルスチルカメラを手にした瞬間に「私が私らしい瞬間を収めたい」と目覚めた。“私らしい瞬間”を撮り続け、フォト日記としてWebサイトとしてあげているうちに注目をあつめ、その“プライベートダイアリー”まで出版してしまった。留学先のソルボンヌ大学の法学部を退学し、転進してしまったナターシャ・メリット氏。

“私らしい瞬間”とは彼女自身のSEXの瞬間。友達や恋人とのその“私らしい瞬間”の日常をデジカメで収め、Webサイトにアップデートし続けている。その“プライベートダイアリー”のエッセンスは、写真集として欧米で出版され、注目を集めている。

“プライベートダイアリー”(ナターシャ・メリット氏の”デジタルダイアリー”より)

「私らしさをただ表現しWebにアップしただけ」と語るメリット氏、会場や地元公営放送ORFからの質問や取材に対しても飄々と答える。

インタビューに答えるナターシャ・メリット氏

――自分のヌードや行為の写真を“プライベートダイアリー”と出して好奇の目で見られないの?」

メリット「そんなこと全然感じたこと無いわ」

――まわりや友達はどう思っているの?

メリット「特別には気にしていないみたい。内容について普通に話すかな」

メリット氏の実家はサンフランシスコ。インターネットを使った表現が当たり前の環境にあって“私らしい瞬間”の徒然も、よく出来た“プライベートダイアリー”でしかなかったようである。

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