今年も8月31日から9月4日までSeybold San Francisco Publishing 98(以下SSF98)が米サンフランシスコのダウンタウンにあるモスコーニセンターをメイン会場として開催されている。
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サンフランシスコで始まったSSF98 |
今回のSSF98は、31日、1日がインターネットを中心にした『Web
Publisher Conference』(以下、セッションなどのタイトルは原語のままとする)、3日、4日が印刷、出版、マルチメディアの『Publishing
Systems Conference』、2日がそれぞれのトピックを深く追求する『Special
Interest Day』と3つの部分に分かれているが、今日は前半の『Web
Publisher Conference』を紹介する。
このコンファレンスでは、初日の31日に今後のインターネットを予測する『Vision
of the Future』と題する複数のパネリストによるキーノートスピーチが、1日にアップル・コンピュータの暫定CEO、スティーブ・ジョブズ氏が登場するスペシャルキーノートスピーチがあった。
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ジョブズ氏の講演直前、司会の女性が登場しただけでホールにざわめきが走る |
PowerMac G3、PowerBook G3を披露したジョブズ
スペシャルキーノートの朝、『iMac』発売以来の好調を受けて、会場の8時30分にはホールの前は期待ムードの観客で埋め尽くされていた。当然、開演の9時には会場の両サイドには立ち見の観客がいるほどで、総入場者数は昨年をかなり上回っているだろう。興奮の中で始まったスピーチでは、まず新聞でも報じられている通りのアップル・コンピュータの好調が紹介された。『iMac』が日本ではすでに各地で品切れ状態であることを報じたインターネットのニュースに場内から驚きの声が上がった。とにかく、同社は今年に入って、第1四半期、第2四半期、第3四半期と順調に業績が伸び、Eコマースを開始した同社のホームページでは月に1000万回ものアクセスを記録している。
ついにヒット製品を生んだアップルではカスタマー、プロフェッショナルのそれぞれをターゲットにデスクトップ、ポータブルの製品が計画されている。『iMac』で成功したカスタマー向け市場のうち、ポータブルは99年度に発売されることになる。プロフェッショナル向けのデスクトップではクロック周波数333MHzのCPUを搭載したPowerMac G3が新たに発売される。このPowerMacはペンティアム搭載機の2倍近く速いという。プロフェッショナル向けのポータブルでも、デル並みの低価格で14インチ液晶のPowerBook G3が登場する。ここではDVD Videoの再生がスムーズに行える。
続いて、10月に登場するMac OS 8.5が登場した。以前からデスクトップとインターネットを統合したインターフェースで扱うという思想のOSが見受けられるが、ここでも既存のサーチエンジンを組み合わせたインターフェースでインターネットのコンテンツ、サイトを自由に検索、迅速にアクセスできる。そのほか、Mac OS 8.5では5倍の処理速度になったAppleScriptでアプリケーションを使った作業も快適に自動化できる。さらに、ColorSyncは機能も強化されている。
その次の世代のMac OS XはMac OS 8.5+Rapsodyという形になる。ここでは完全なマルチタスクが実現されるが、既存のMac OS 8は問題なく使える。また、これで爆弾マークを見ることもなくなるという。デモでは爆弾マークが登場したが、そのアラートには「今後は登場しませんので、あなたのコンピュータを再起動するは必要ありません」と書いてあった。
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司会との掛け合いで会場からの質問に答えるジョブズ氏。デモで見せた爆弾は爆弾が2度と出ないことの宣言のためだという |
最後に、ついに話題のK2(Quark Killer)*1の姿を見た。デモから受けた印象ではレイヤーが使えて、パレット類のインターフェースはAdobe
Photoshopと同じ、テキストボックスがベジェ曲線であるなど「Adobe
Photoshop+Adobe PageMakerの上にQuarkXPressを乗せた」という感じか。
*1 編集部注:アドビが開発中の新ソフト。アップルが開発に深く関与しているという説もある。
インテルとゼロックスの両社副社長が講演
一方、31日にはインターネットの将来を予測する『Vision of the
Future』と題するキーノートスピーチが行なわれ、モデレーターのクレーグ・クライン氏(シーボルトのアナリスト)、米インテル副社長のエブラム・ミラー氏、米ゼロックス副社長のジョン・S・ブラウン氏が登壇した。![]() | シーボルトの名物アナリスト、クライン氏 |
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ミラー氏は現在のWeb環境は「いろいろな意味での分岐点にさしかかっている」と分析する。この数年のうちに帯域幅の拡大とコンピュータのパワーの向上でデジタルビデオ、3D画像と音声もインターネットで送られるようになり、もっと豊富なコンテンツによるコミュニケーションも当たり前のことになる。それに加えて、企業が今後こぞって乗り出すEコマースも注目の分野と指摘する。
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クライン氏を司会にディスカッションするパネリスト陣 |
ついで、Brown氏は紙のメディアとWebのメディアの境界線が流動的になってきたと指摘する。今後はデータの流れが双方向になる。従来のようにコンピュータのデータが出力を通じて紙媒体に加工されるばかりではなく、紙の上にある情報を読み取って効率よくデータに分解してくれる。もちろん、このデータは単なる文字情報ではなく、データベースでいうところの属性も持っている。このような世界を予測してゼロックスのPARC(Palo
Alto Reseach Center)ではいろいろな研究が日夜進んでいるという。
