(社)日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)は3日、“第5回インターネット・ガバナンスに関する研究会*”を開催した。 今回は、「なぜICANNが必要か?」というパネルディスカッションが行なわれた。
その中で一般会員制度“At-Large”の登録を増やそうという働きかけについて、「ジャパンICANNフォーラムは、パンドラの箱を開けてしまったかもしれない」「ボトムダウン、トップダウンといろいろな方向からの働きかけが必要」「単なる数集めではなく、中身を知ってもらう努力が必要」と、活発な意見交換が行なわれた。
*インターネット・ガバナンスに関する研究会:ICANNを中心に、インターネットの資源調整に関する国際的動向の情報提供や、テーマを設定して定期的に定例会を開催し、理解を深めることが目的の研究会。
JPNIC国際企画部会研究会世話役の荒野高志氏、日経デジタルコア設立事務局の坪田知己代表幹事、JPNIC副理事長兼ジャパンICANNフォーラム事務局長の東田幸樹氏、三和総合研究所の高橋明子氏、市民コンピュータコミュニケーション研究会の浜田忠久氏(左から) |
会津氏は、「At-Largeはエンドユーザーの組織だが、事実上は利害関係の数争いになっている」と指摘し、「ではどうすればよいのかには、まだだれも答えを持っていないと思う」とも語った。さらにジャパンICANNフォーラムが企業や団体を組織してAt-Largeへの登録を呼びかけていることについて、「パンドラの箱を開けてしまったかもしれない。韓国なども同様の手段に出ることが予想される」と、数争い、特定の団体、国によるキャプチャーが激化する先鞭をつけてしまったかもしれないと危惧を表わした。
それにたいして、東田氏は「本来はインターネットを利用している人が全部選挙人であるべき。当初ICANNはAt-Large会員の目標を5000人と言っていた。5000人で決めてしまってよいのだろうか。少なくとも100万人ぐらいが出てきてほしい。下からも上からも横からもいろいろな方向からの働きかけが必要」と、ジャパンICANNフォーラムの働きかけは企業や団体を介して裾野を広げているのだと説明した。
荒野氏は、「単なる数集めではなく、中身を知ってもらう努力が必要」と述べた。坪田氏は「英語から日本語、技術者レベルから一般レベルへのトランスレーションが必要。わかりやすく、要点を明確に伝えることが重要」と語った。
現在インターネット関連のセミナーなどのたびに、「At-Largeへ登録しよう」という紙を目にする。しかし、「登録しました。権利を主張します」だけではなく、中身を知り、我々として何ができるのかを考えることが大事なのだという。一般会員に登録しただけではない、本当の参加が求められ始めているといえよう。