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2D画像と3D画像をシームレスにつなぐ夢のデザインシステムも―――次世代デジタル応用基盤技術開発事業及び先端的情報化推進基盤整備事業に係る成果発表展示会より(前編)

2000年06月02日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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6月1日、東京・千代田区の赤坂プリンスホテルにおいて、IPA(情報処理振興事業協会)の主催により、“次世代デジタル応用基盤技術開発事業及び先端的情報化推進基盤整備事業に係る成果発表展示会”が開催された。これは'98年度の国家補正予算によって実施された、ソフトウェアやハードウェア技術開発事業の研究成果を発表するイベント。

先進的、戦略的な研究を実施する“次世代デジタル応用基盤技術開発事業”からは、413件の応募のうち74件が採択された。また、より基盤的で、情報技術の利用分野を拡大し、産業技術の課題に応えることを主眼にした“先端的情報化推進基盤整備事業”では、95件のうち12件が採択された。本稿では、成果発表会で展示された技術や研究の中から、ヒューマンインターフェース関連をピックアップして紹介する。

展示会の模様。団体や企業の研究成果を一挙に公開
展示会の模様。団体や企業の研究成果を一挙に公開



成果発表会は、ネットワーク、高度コンピューティング、ヒューマンインターフェース、マルチメディア、基盤ソフトウェア、デバイスの関連技術コーナーに分けて展示された。

仮想空間で力を感じることができるようになる!?

(財)イメージ情報科学研究所は、東京工業大学らと“3次元グリップとVR技術による空間GUIシステム”を開発し、そのデモンストレーションを行なった。これは、従来のユーザーインターフェースが視覚や聴覚を主体としたものであるのに対し、力覚を利用して、力を感じながら操作できる空間GUIシステム。

3次元グリップ(左)を使って、ディスプレー画面上(右)の仮想空間を歩く。カーソルが壁に当たると力を感じることができる
3次元グリップ(左)を使って、ディスプレー画面上(右)の仮想空間を歩く。カーソルが壁に当たると力を感じることができる



独自開発した3次元グリップには、8本のストリングテンションを装備してあり、グリップを動かした際の糸のテンションによって、3次元の位置を検出できるようになっている。この装置とパソコンをUSBインターフェースで接続し、空間GUIに位置情報を送る。仮想空間にあるオブジェクト(たとえば、街の建物や壁)にグリップカーソルが接触すると、その反力がグリップにフィードバックされて力覚として伝わるというもの。

重さや粘性を感じることができるので、仮想物体に触れたり、それを動かしたりする際にリアリティーのある操作が可能になる。仮想空間でのウォークスルーやショッピングモール、教育、福祉、造形、設計分野でも応用できる。

個人で異なる指先を3次元ポインティングデバイスで認識

(株)フライト・プランは、一般普及型の“3次元ポインティングデバイス”を開発し、そのデバイスの試作機と、それを駆動させるためのソフトを展示した。3次元ポインテイングデバイスの試作機は、円筒状のデバイスにマトリクス状にデジタルセンサーを配置したもので、指で加圧した部分を認識する。

主にこの研究では、デバイスのどの位置をどの指で加圧したかを分析し、その加圧状態をX/Y/Z方向からベクトル情報に変換する方法を考案した。利用者の手のひらはそれぞれ大きさが異なるので、認識精度に誤差が生じる。そのため、加圧されたセンサー部をポリゴン(3角頂点)に分割し、その3角頂点の距離間を拡大、縮小することによって誤差を吸収するという。また、加圧状態の検出では、Z方向のベクトル(デバイスを押したときの中心方向の成分)を切り分ける方法を考案した。

手前の円筒状のものが試作品のデバイス
手前の円筒状のものが試作品のデバイス



現在の試作機は円筒状になっているが、将来的にはもう少しデバイスを小型化し、グリップしやすいような形状にしていくという。

2D画像と3D画像をシームレスにつなぐ夢のデザインシステム

(株)エリジオンは、三洋電機、電気通信大学らと共同で開発した“2D画像と3D画像をシームレスに用いるデザイン支援環境”を展示。このシステムは、デザイナーがスケッチした2D画像を、3Dの立体画像にシームレスに変換して観察できるもの。スケッチを描く2Dパッド、それを3Dで観察する3Dパッド、ペン、音声入力マイクなどから構成されている。

もともとデザイナーが絵を描くときには、目で見た立体画像を頭の中で平面に変換して紙の上で表現している。実際には頭の中で2Dと3Dのイメージがシームレスにつながっているのに、紙に描く際はわざわざ2Dのイメージにしてアウトプットしている。もし、描いた2Dデザインを3D化し(その逆もあり)、さらに異なる視点からシームレスに観察できるようになればとても便利だ。

デザイナーは、2Dパッド上で描いたスケッチをつかんで3Dパッド上に移動し、ジェスチャーによって3D空間で回転させながら観察することができる。修正は2Dに戻して加え、ふたたび3Dに戻すことによって立体的なスケッチを完成させることができる。

右にあるのが2Dパッド、左にあるのが3Dパッド右にあるのが2Dパッド、左にあるのが3Dパッド



3Dディスプレーは、よくある3Dメガネをかけるのではなく、裸眼で立体的に見えるように工夫している。液晶ディスプレイ―の上に縦ストライプの入ったイメージスプリッターを配置し、その効果によって立体画像を観察できるようにした。

また、観察者が頭を動かすと、立体画像にモアレやクロストーク(2重像)が発生するので、これらを防ぐために、ヘッドトラッキングシステムを導入している。観察者の頭に追従して、3Dディスプレー上のイメージスプリッターの位置を変化させ、最適な立体映像を表示する。

写真だと3Dに見えないのが残念。ディスプレーの上にトラッキングシステムが設置されている
写真だと3Dに見えないのが残念。ディスプレーの上にトラッキングシステムが設置されている



このシステムの試作品はトヨタ自動車(株)において実証実験が行なわれた。まだまだ実用化に向けての課題は多いが、“使えるシステム”になるように今後も研究を続けていくという。

ビデオを要約するシステムで、効率よく時間を使う

(株)オージス総研は、米カーネギーメロン大学と協力し、ビデオコンテンツから重要部分をピックアップして、時間を短縮する“ビデオ要約システム”を開発、その試作品を展示していた。

ビデオを要約するために、映像シーンやカメラモーション(ズームなど)の変化などや、キーワード、音声レベルの変化などをフレームごとに抽出し、動画像・音声それぞれのルールに基づいてビデオを要約するといもの。単語の優先度など、ルールは優先順位を付けられ要約したい時間に合わせて再生できる。

画面上の3本のトラックは3分、5分、10分にした際に再生される部分を表わしている。下の画像は同社のビデオの再生画像画面上の3本のトラックは3分、5分、10分にした際に再生される部分を表わしている。下の画像は同社のビデオの再生画像



デモンストレーションでは、18分の番組を3分に要約した映像を流していた。コンテンツにもよるが、ニュースやミュージック番組、スポーツ番組などで特に効果化を発揮できるようだ。現在はMPEG1までしか対応していないが、将来的にはMPEG2にも対応していきたいという。

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