(株)日立製作所と米イクエーターテクノロジーズ社は7日、都内で記者発表を開催、CATVのセットトップボックスなどの情報家電をターゲットとした、メディアプロセッサー『MAP-CA』(Media
Accelerated Processor for Consumer Appliances)を共同開発し、サンプル出荷を開始したと発表した。
日立製作所の松香茂道代表取締役副社長「両社の研究開発努力がようやく実を結んだ」 |
メディアプロセッサーは、専用の回路を追加するなどして、画像処理能力を強化したDSPの1種。ソフトウェアを書き換えることで、デジタルテレビやビデオ、セットトップボックスといった用途に応用できるため、松下電器産業(株)、シャープ(株)、三菱電機(株)、オランダのフィリップス社など、家電メーカー各社が手がけている。
米イクエーターテクノロジーズ社の鈴木久之取締役副社長兼CFO |
イクエーターは、メディアプロセッサーの開発を目指して'96年に設立されたベンチャー企業。日立製作所とイクエーターは、'97年1月にメディアプロセッサーの共同開発契約を交わしており、'98年秋には最初の製品である『MAP1000』を発表した。このMAP1000は、チップサイズが大きいことや、価格が高かった(1000個ロット時650ドル、約7万円)こともあって、あまり数は出なかった(出荷数は非公開)という。
今回発表されたMAP-CAは、MAP1000の経験をふまえて開発された製品。独自開発の*136bitVLIWプロセッサーコアと画像処理のためのプロセッサーを組み合わせたもの。30GOPS*の性能を持つが、これは、既存の他社のメディアプロセッサーと比較して、5倍以上の性能であるとしている。動作周波数は300MHz、0.20μmプロセス技術により日立が製造する。
*VLIW:Very
Long Instruction Word、複数の命令を1つの命令にし、それらを同時に実行するプロセッサーアーキテクチャーの1つ。
*GOPS:Giga Oparations
Per Second、1秒間にいくつの命令を処理できるかを示す。DSPの性能を示すために使われる。
MAP-CAは、セットトップボックスはデジタルビデオなど従来専用ICが使われてきた製品で、専用ICを置き換えることを狙っている。MAP-CAを利用することで、例えば新しい画像フォーマットへの対応や、新機能の追加といったことが、ネットワークを通じてソフトウェアをアップデートすることで可能になるという。プログラムの開発にあたっては、Cコンパイラーが提供されるので、アセンブラーが使われることの多いほかのメディアプロセッサーと比較して、数分の1の開発期間ですむとしている。また、リアルタイムOSの搭載も可能という。
『MAP-CA』 |
現在サンプル出荷中で、価格は300ドル(約3万2000円)、7月には量産出荷を予定しており、20万個購入時の価格は40ドル(約4300円)。またCコンパイラーやデバッガーを含む開発支援ツールは1万2000ドル(約129万円)、評価用ボードが3500~5500ドル(約37~59万円)となっている。
MAP-CAの評価用ボード(PCIカード) |
販売は日立とイクエーターそれぞれのチャネルを通じて行なう。現在カナダの複数のセットトップボックスメーカーへの納入が決まっているという。
発表会では、MPEG-2のファイルをデコードして表示しながら、別のMPEG-2ファイルをデコードして、画面内のウインドーに表示したり、ビデオ入力をMPEG-2フォーマットにエンコードしてHDDに記録しながら、そのMPEG-2ファイルを追いかけ再生する、といったデモンストレーションが行なわれた。自然画像処理のほか、アウトラインフォントの処理にも向いており、ポストスクリプトプリンターへも適しているという。
なお、今後はおよそ1年ごとに新しい世代の製品を発表していくことも明らかにされた。来年には動作周波数450MHzで、0.14μmプロセス技術で製造される製品が予定されている。