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【INTERVIEW】「研究者養成大学とは違う道があるはず」--社会人教育を重視する埼玉大学大学院、東京に分校開設

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埼玉大学大学院、経済科学研究科では今年4月、東京駅八重洲口にサテライトキャンパスを開設する。社会人教育を重視した大学の再編を試みる同校の経済学部長、貝山道博氏と、新しい指導体制づくりに取り組む同校教授、西山賢一氏に、今回の試みについてのお話を伺った。

大学の生き残りを賭け、今後も社会人教育の環境を整えていきたいと話す、貝山氏(右)と西山氏
大学の生き残りを賭け、今後も社会人教育の環境を整えていきたいと話す、貝山氏(右)と西山氏



「上り、埼大行き」--東京駅から徒歩2分

--今年、東京に分校を開設されるそうですね。

貝山「はい。東京ステーションカレッジと名付けて、4月からサテライトキャンパスを開設する予定です。これは社会人を主に念頭に置いた大学院という構想に基づいて、実験的に開設するものです」

--この分校の狙いはどういうものですか?

貝山「埼玉大学では近年、社会人教育に力を入れています。都内に通勤する100万人の埼玉県民、つまり埼玉都民にとって通学しやすいよう、ロケーションにはこだわりました。同窓会の意見も採り入れて東京駅周辺に限定して探し、八重洲口から徒歩2分という好立地に構えることができました。またサテライトでの開講は、社会人学生が勤務と両立できるよう、18時から21時10分までとしました。講義終了後の夜間には、論文指導などを行なう予定です」

埼玉大学経済学部長、貝山道博氏。「サテライトキャンパスの開設は、私学では珍しくなくなりました。ただ、国立大学が県境を越えて実践した例はなかったと思います」
埼玉大学経済学部長、貝山道博氏。「サテライトキャンパスの開設は、私学では珍しくなくなりました。ただ、国立大学が県境を越えて実践した例はなかったと思います」



--確かに、社会人のニーズに応えられる体制ですね。

貝山「国立大学は、大体、1県に1つで、県境を超えないのが原則と文部省は考えているようです。しかし、時代の要請を考え、あえて東京の都心を選びました。修士課程の社会人特別選抜枠を15名増員し、定員を24名とします。増員分は、4月に入試を行なう予定です」

最前線のビジネスを支える理論を体系づける

--埼玉大学としては、以前から社会人教育へ取り組まれていたのですか?

貝山「そうです。少子化が問題となっている現代社会ですが、ビジネスマンや高齢者の学習意欲は高まっていますから、今後の大学の生き残り戦略としても、社会人の教育、能力開発には大きな可能性があると考えています。'93年にこの経済科学研究科が設立されたのですが、社会人学生の研究条件を整えるため、当初から夜間開講体制を取り入れてきました」

西山「現場の第一線で活躍するビジネスマンや起業家は、経済の最前線を裏付ける理論を学びたいと考えています。知識が豊富で、現在の経済状況を把握している人々が、その情報をいかに体系づけるかという、一歩踏み出した形での学問を求めているのです。我々はそのニーズに応えるためにも、新しい理論の研究を進めていきたいと考えています」

埼玉大学教授、理学博士の西山賢一氏。 「学問を求めている社会人が最近多いですね。例えばカルチャーセンターの受講者も、向学心が旺盛で知識が豊富。生半可な事は言えないな、と、こちらも緊張します」埼玉大学教授、理学博士の西山賢一氏。 「学問を求めている社会人が最近多いですね。例えばカルチャーセンターの受講者も、向学心が旺盛で知識が豊富。生半可な事は言えないな、と、こちらも緊張します」



--では、講義内容はどのようなものになるのですか?

西山「社会人の学ぶ場として、最先端の内容にしなければと思っています。ここ最近、経済状況のあり方自体が、大きく変貌しています。たとえば、Linuxなどのフリーウェアの登場と発展は、今までの経済理論では対応できない、新しい形ですね。しかし、ビジネススクールや従来の大学の講義では、統計やケーススタディーなどが中心で、現実と乖離した内容になっている。我々のカリキュラムではこのギャップを埋める、21世紀の経済状況に対応した新理論を展開する予定です」

貝山「具体的には、教授側の人材として、ビジネスの第一線や官僚界で活躍する方を客員教授や講師に招き、実践経験を語っていただきます。カリキュラムとしてはプログラムを4つ組み、テーマに応じて東京校と埼玉の本校に振り分けます。東京のほうでは,“国際ビジネスと金融”、“ビジネス複雑適応戦略”という2つのプログラムを中心に講義を組み、“企業経営と労働”、“経済発展と公共政策”のテーマは、本校に配置します」

全日の大学院が中心の研究者養成大学とは異なる道を

--東京の国立大としては、東京大学、一橋大学などが有名ですが、これらの大学とは、どのように差異化を図るのですか?


西山「東大や一橋は、研究者を養成する大学としての意義が第一なのではないでしょうか。埼玉大学では、社会人教育の実績を積み重ねてきているので、今後もその方向でカリキュラムを充実させていきたいと思っています。一般の学生に比べ、社会人学生は“学ぶ”以上に“自らの考えを発表し、議論したい”という表現欲が強いので、我々教える側にとっても刺激になります。こうした学生のニーズに応えるには、規模の大きな大学よりも、少人数制できめ細やかな指導のできる埼玉大のシステムのほうが向いていると思います。卒業生の中には他校の教授や学部長などに抜てきされた人もいますし、論文が出版されたケースもあるなど、着実に実績を残しています」

「金融、複雑系などについて、東京サテライトで、ビジネス最前線の人たちと一緒になって深め合いたい」と西山教授「金融、複雑系などについて、東京サテライトで、ビジネス最前線の人たちと一緒になって深め合いたい」と西山教授



貝山「実際、埼玉大学と東京大学、両校の大学院に合格した社会人学生が、こちらを選んだということもあるんですよ。講義内容などを事前調査し、口コミなどの評価を参考にしているようです」

東欧およびタイなどアジアとの関係重視

--埼玉大学には留学生も多いそうですが、国際的な相互協力についてはどのようにお考えですか?

貝山「東南アジアや東欧の旧社会主義国の若手研究者を受け入れ、養成しています。経済科学研究科の修士課程にも、3名の外国人特別選抜枠を設けています。留学生の中には、タイの研究者に教わりたいことがあるから、1ヵ月だけあちらに行きたい、という者がいたりする。我々としても、国際交流を進めていきたいと考えているので、学生の希望に添えるよう、現在対応しているところです」

「大学院だけで学部を持たない学科を設置するチャレンジでも埼玉大学が他大学に先行しました。この、政策科学研究科が母体になって、独立の大学院大学が設置されています」と貝山教授「大学院だけで学部を持たない学科を設置するチャレンジでも埼玉大学が他大学に先行しました。この、政策科学研究科が母体になって、独立の大学院大学が設置されています」と貝山教授



「今後の研究のあり方としては、これまでのように1人の先生にずっと教わる、というのではなく、あちこちに出かけて行って学びたいことを学んで帰ってくる、という形がいいのではないかと考えています。そのためにも、埼玉大学としては国際的な相互協力を惜しまず、フレキシブルに研究をサポートしていきたいですね」

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