来年末にもスタートする新株式市場ナスダック・ジャパンに公開を目指す企業が加入する“ナスダック・ジャパン・クラブ”の初会合に先立ち、ナスダック・ジャパン・プランニング(株)社長の孫正義氏と全米証券業協会(NASD)会長のフランク・ザーブ(Frank
G. Zarb)氏、ナスダック・ジャパン代表世話人でアサヒビール(株)名誉会長の樋口廣太郎氏の3氏による記者会見が行なわれた。孫氏は、「ナスダック・ジャパンの設立準備は順調に進んでいる。ベンチャーと投資家にとって開かれた市場にしたい」と意気込みを語った。また同市場への公開基準案も明らかにされた。
握手する樋口氏(左)、ザーブ氏(中央)、孫氏 |
会見で孫氏は、「ナスダック・ジャパン・クラブには約3100社が会員となり、きょうは2000人以上が集まった。日本のベンチャー企業の熱い志が集まっていることを感じてもらいたい」とあいさつした。
「先日のアンケートでは、約7割の企業がナスダック・ジャパンで株式公開したいと答えており、マインドシェアは十分にとれたと思う」と自信を見せる孫氏 |
また「クラブでは、11月から毎週1回、10社ずつ計500社のベンチャーを募り、証券会社やベンチャーキャピタル、銀行に向けて自社のビジネスプランを発表する場を設ける予定で、さながら“スター誕生”のような状況になるだろう。設立準備は、当初のタイムテーブルよりも早いピッチで進んでいる。ベンチャーにとっては開かれた市場に、海外投資家にとっては日本の成長企業に投資できる場に育てたい」と語った。
一部で報道された大阪証券取引所との全面提携については、「既存の取引所との協力も含め、さまざまな可能性を探ってはいるが、特定の取引所と具体的に提携がまとまっているような状況にはない」と否定した。
「ナスダック・ジャパンは『パートナーシップ』だ。日本と米国、上場企業と投資家とのパートナーシップを築く場だ」と述べたザーブ氏 |
NASD会長のザーブ氏は、「NASDAQというプラットフォームの拡大で、海外投資もより増加する。日米の市場がインターリンクしてお互いの経済が活発になり、新しい仕事や雇用が生まれるだろう。実際、米国では活発な市場の効果で多くの雇用が生まれている。ナスダック・ジャパンが刺激となり、日本の経済に活気もたらすだろう」とNASDAQが日本に上陸する意義を語った。
「経団連金融委員長を4年間務めた経験を生かしたい」とした樋口氏 |
樋口氏は、ナスダック・ジャパンの代表世話人として記者会見に臨んだ。樋口氏は、「米NASDAQが米国の経済界に大きな衝撃を与えたのは事実。経済戦略会議の議長として、小渕首相に多くの提言をしたが、『健全にして競争的な日本社会』の実現が共通の目標。この認識の下、ナスダック・ジャパンにも取り組みたい」と述べた。
ナスダック・ジャパンには、アドバイザーとして“世話人”と“発起人”の2組織がアドバイザーとして参加する。世話人は樋口氏のほか、セコム(株)最高顧問の飯田亮氏、ソニー(株)社長の出井伸之氏、富士ゼロックス(株)会長の小林陽太郎氏、(株)イトーヨーカ堂社長の鈴木敏文氏、(株)フジテレビジョン社長の日枝久氏、オリックス(株)社長の宮内義彦氏が参加している。発起人は、ここ数年で株式公開、上場を果たした若手企業(エイベックス(株)、(株)コーエー、トレンドマイクロ(株)など21社)の経営者が加わっている。
この後開かれたナスダック・ジャパン・クラブの初会合で、会員企業に対しナスダック・ジャパンへの公開基準の第1次案が示された。日本企業が米NASDAQにも公開しやすいようにと、米NASDAQとほぼ同じ基準となっている。すでに実績がある企業が含まれる“スタンダード”と“ベンチャー”の2つにカテゴリーを分ける。ベンチャーの公開基準は、純資産4億円(公開時の公募による増資額を含む)か、時価総額50億円か、税前利益7500万円のいずれかを満たし、浮動株は1000単位、設立年数は1年以上(時価総額50億円を満たす場合は関係なし)、浮動株時価総額5億円、株主数300人となっている。
初会合には約2300人が参加。同市場開設準備の進ちょく状況などについて説明を受けた。