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日本タイポグラフィ協会による“TYPOGRAPHY ACADEMY 1999~2000”開催

1999年09月20日 00時00分更新

文● 編集部 堀田ハルナ

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日本タイポグラフィ協会は、“文字コード”などをテーマにしたセミナー“TYPOGRAPHY ACADEMY 1999~2000”を、17日に開催した。講師は、日本規格協会符号化文字集合調査研究委員会オブザーバーの小池和夫氏と、校正者であり辞書研究家の境田稔信氏である。

セミナーには印刷業界や出版業界から約70人が参加した
セミナーには印刷業界や出版業界から約70人が参加した



日本タイポグラフィ協会は、日本レタリングデザイナー協会('64年設立)を母体として、'71年に設立された団体で、内外のグラフィックデザイナーや研究者、教育者など約200名が所属する。同協会では『日本タイポグラフィ年鑑』の発行や、タイポグラフィーに関する研究、海外交流、博物館の設立運動などの活動を行なっている。

今回のセミナーは、小池氏による“字種・字体・文字コード~新JIS・明朝体と楷書の異体字”と、境田氏による“校正~文字ヲ校ベ正ス”の2つである。

1つ目の講演では、現在話題になっている“文字コード”問題で、具体的にどの文字がなぜ問題になっているのかが解説された。小池氏はまず、似たような2つの漢字や新漢字と旧漢字をいくつも並べてスライドに映し出し、会場の参加者に「この2つは同じ漢字でしょうか?」と質問した。

スライドには似たような漢字がいくつも映し出された
スライドには似たような漢字がいくつも映し出された



文字コードでは、見た目の異なる漢字をどのような基準で同じと見なすかが大きな問題になるという。しかし、これは非常に難しい問題である。たとえば“沢”という漢字は、“澤”の草書体と思われがちだが、源流を辿ると全く異なるという。また、“柿(かき)”と“柿(こけら)”という2つは本来異なるものだが、今年度中に制定される新JIS漢字コードでは同じコードが割り振られているという(したがって、この記事上でもまったく同じ漢字が表示されているはずだ)。

小池氏は、諸橋大漢和辞典や康煕辞典など多くの資料にあたりながら、1つ1つの漢字の源流をたどって見せた。会場からは、その作業のあまりの複雑さ、細かさにため息も漏れた。

小池氏は、「文字の揺れすべてを捉えようとすると文字コードの数は無限に増えていかざるを得ない。しかし、公的な基準を設置する際にはどこかで線引きをしなくてはならない。JIS規格は、強制力を持ったものではないので、必要であれば“今昔文字鏡”*のように、必要であれば、その際にどんどん増やせばよい。印刷所とのやり取りの際にどのコードを利用したかを明確にすれば、誤植などの混乱は避けられるだろう。こうした問題を正しく認識して、文字コード問題をとらえてほしい」と語った。

*紀伊国屋書店から出版されている8万字の漢字を検索できるソフトで、東アジア漢字文化圏の漢字がほぼ網羅されている。

日本タイポグラフィー協会では、2ヵ月に1度、タイポグラフィにまつわるテーマでセミナーを開催している。次回の開催は11月9日で、テーマは“エディトリアル・デザイン”と“アドバタイジング・デザイン”である。

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