遠隔医療研究会実行委員会(委員長:開原成允、国立大蔵病院院長)主催の“第2回遠隔医療研究会”が本日、都内で開催された。大学、病院をはじめとした40の研究機関が、遠隔医療に関する取り組み、研究成果を発表した。
遠隔医療は、遠隔地にいる患者に対し、医師が情報通信機器を利用して診断や指示などの医療行為を行なうもので、'97年12月には厚生省も医師法に抵触しないとの見解を示している。近くに病院がない、病理医がいないなどの事情を抱えるへき地や離島においてもっとも効果を発揮する治療だけに、地方での研究が盛んなことが特徴で、北海道や九州などからも数多くの成果が提出された。
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遠隔医療の医療効果
遠隔医療は各地で実用化が進みつつあるが、まず通信インフラの整備が問題となってくる。光ファイバー、ISDN、アナログ公衆回線、通信衛星、ケーブルTV回線など、各種の通信回線を用いた研究が報告されたが、現在もっとも広く利用されているのはISDN。ただ、現在のINSネット64のデータ転送速度(64Kbps)では、動画を用いた診療にはまだ適用しづらいとの意見が一般的だ。光ファイバーに関しては、動画による診療にも十分耐えられるものの、コストがあまりにもかかりすぎ、実用にはほど遠いようだった。遠隔医療の事例についての発表は、病理診断と在宅医療が中心となった。
病理診断は、病理医のいない病院において、遠隔地にいる病理医がネットワークを通じて、患部の診断を行なうもので、その需要が大きい背景として病理医が都市部に集中していることが挙げられる。病理診断の医療効果は多くの事例で実証されていた。在宅医療に関しても、リハビリや血圧測定、心電図測定などの簡単なケースや、医師への相談などは十分に実用可能と判断された。
また、クルマに医療機器や通信機器を搭載して診療を行なう研究や、インターネットとWebブラウザーを利用して診療を予約するシステム、ホームページ上にオンライン会議室を設け、医師や患者が意見交換を行なうシステムなどの研究も公開された。また、TV電話だけでなく、CTI(コンピューター電話統合)システムの利用も検討されていた。
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遠隔治療の抱える課題
遠隔医療のメリットとしては、患者がわざわざ病院に行かなくてもよいというほかに、病理医の指示により、不要な手術を回避したり、患部の適正な切除ができることが大きい。このことは、ひいては患者の精神的、肉体的、経済的負担を軽減することにつながるからだ。そのほか、ネットワークによる患者や医師自身への教育効果にも期待が寄せられていた。一方、課題としては、次のような意見が出ていた。
・通信料金や設備にかかる費用が大きい
・保険制度や患者の医療費をどうするか
・患者のプライバシーを守るためにセキュリティーが必要
・病理医が不足している
・術中病理診断の最中に通信機器が故障した場合どうするか
遠隔医療が本格的に普及しないのは、やはりコストの問題が大きい。コストに見合うだけの有用性が見出せないと判断している人もいる。情報技術の進歩、通信コストの低減を非常に待ち望んでいる分野だといえる。(報道局 浅野広明)
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