月刊アスキー 2008年7月号掲載記事
日本で初めて「白熱電球」が灯されたのは、1883年のことだった。1890年に設立された電球メーカー「白熱舎」は後に「東京電気」に社名を変更し、芝浦製作所と合併して「東芝」(当初は東京芝浦電気)となった。白熱電球の伝統はさらに、照明事業を分社化した「東芝ライテック」へ受け継がれた。
だが今年4月、経済産業省は2012年までに国内での白熱電球の製造を終了し、電球形蛍光ランプへの移行を促す方針を明らかにした。電力を多く消費する白熱電球を廃することで、二酸化炭素排出量を削減する。これに呼応して東芝ライテックは4月14日、2010年をメドに120年続いた白熱電球の生産ラインを廃止すると発表した。
東芝グループにとって、創業事業である電球事業から撤退というのは大きなダメージが――と思いきや、東芝ライテックはむしろビジネスチャンスと捉えているようだ。というのも、電球形蛍光ランプを日本で初めて製造したのも実は東芝で、同社はこれまで、電球の代わりとして電球形蛍光ランプの普及に力を注いできたからだ。政府方針は、同社にとって大きな追い風なのかもしれない。
東芝ライテックが電球形蛍光ランプへの移行を促す理由には、CO2削減に加えて、電球に比べて単価が高く、同じ個数でも利幅が大きいことがあるだろう。だが、消費者にとっても移行のメリットは小さくない。例えば60Wの白熱電球の価格は約100円で、同じ明るさの電球形蛍光ランプの価格は1000円前後と約10倍になる。しかし寿命は約6倍に伸び、また消費電力は12W程度と小さいため、電気料金を含めると電球よりコスト面はお得だという。
2006年度に日本で出荷された電球形蛍光ランプは2300万個。対して白熱電球の出荷数は約1億1000万個だが、4年後には白熱電球の大半は電球形蛍光ランプに置き換わることになる。もっとも、電球形蛍光ランプのほうが白熱電球より寿命が長いため、全体の出荷数は減る見込みだ。