月刊アスキー 2007年4月号掲載記事
防災シミュレータを「楽しい」と言ってしまうのは不適切かもしれない。けれども、NTTコムウェアが開発した「タンジブル防災シミュレータ」は、触れば触るほど楽しさを感じてしまう。
このシミュレータでは、避難所や広報車の設置は「パッド」と呼ばれるコマを置くだけ。 避難所の収容人数や拡声器の到達範囲等も、オーディオのボリュームを調節するように、パッドを回して設定できる。このような、何らかの実体があり、触れて知覚し得るインターフェイスを「タンジブル・インターフェイス」という。手に持つパッドの動きがプロジェクタの投影する画面内にリアルタイムに反映され、まるで画面内の世界と実世界が完全に直結しているように感じられる。
防災シミュレータというと、官公庁の防災担当者のものというイメージが強い。もちろんタンジブル防災シミュレータもそういった需要を狙っており、防災担当者はどこにどのくらいの収容人数の避難所を設置すればいいのか、災害発生後いつまでに防災無線や広報車による避難情報を提供すればいいのか等を検証できる。
だが、タンジブル防災シミュレータではさらに、個人が自宅や家族構成を設定して、自分はいつ、どこへ避難すればよいのかを調べられる。NTTコムウェアの成田篤信氏は、「タンジブル・インターフェイスで、直感的に誰でも使える。専門家だけでなく、一般の人々に実際に体験してもらうことによる防災意識の啓蒙効果は大きい」と強調する。
タンジブル・インターフェイス自体は、ネットワークやビジネスフローを設計するソリューションとして、すでに導入事例がある。防災シミュレータとしての導入はこれから。
とかく忘れがちな災害の怖さを知り、その対策を考えてもらうために、多くの人々がこのシミュレータに触れられる環境が整えられることを切望したい。
