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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第22回

ボカロで「自由」を手に入れた 佐久間正英が語る音楽の未来

2010年05月08日 12時00分更新

文● 四本淑三

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「音楽がお金を生むものと決めているのは変」

―― 今はフリーダウンロードだけど、誰かに歌ってもらって商品化する段階で、著作権管理の必要も出てきますよね? すると今まで上げていた音源はどうします?

佐久間 どうしようね? 僕は音楽の著作権というのは崩壊してると思ってる。音になったものは、音にした人の著作物だと思うの。ストリートライブの音源であっても、著作物だと思うのね。だけど、昔の概念で言う「メロディや歌詞に著作権がある」というのは変だと思ってる。ブルースのメロディに著作権があるなんて変でしょ?

―― うん、どれも同じですからね。

佐久間 たった12音しかなくて、その中で調が決まっていたら、その中で使える音は決まってる。その順列組み合わせでしかない。だって、ありえないメロディーなんてないんだから。ありえないものは作れないし、それは音楽ではなくなっちゃうよね。

「『メロディや歌詞に著作権がある』というのは変だ」

―― 譜面に書けるようなものということですよね?

佐久間 たとえば僕は頭の中で曲を作るわけ。するとメロディも何もかも頭の中にある。これに著作権があるのかっていうこと。空想の怪獣と同じで、それを目に見える形にしたら著作物だけど。歌詞で言えば「お前が好きだ」という言葉に著作権なんてあるんだろうか? だけど「スリル・イズ・ゴーン」って誰かが歌ったそのときに、それを歌った人の著作物になるんだと思う。

―― つまりパフォーマンスの記録や制作物は著作物かも知れないけど、ということですよね。

佐久間 結果としての音は著作物だとは思う。ボーカロイドでも、もしあの声に著作権を付けていたら変だと思うの。レスポールというギターがあって、それを弾いたから(ギターの音に対する)著作権使用料をくれ、という話にはならないのと同じでしょ。

―― ただ、そうするとお金にならないという話も出てくるわけです。ボーカロイド界隈で言えば、著作権管理をしないのが常識だったんですが、それがカラオケなんかに二次利用された場合、作家の収入にならないこととか。

佐久間 僕が最初にストリートライブと言ったのはね、本来、音楽はお金なんて生まなくていいと思ってるの。ただライブをやって、こいついいな、と思ったら百円でも誰かが入れてくれる。そんな人が増えてくれたら、食べていけるようになるかも知れない。それで初めてプロと呼べるわけでしょ。最初から音楽がお金を生むものと決めているのが変なんだよね。

―― おお、なるほど。賢者の言葉だ。

佐久間 逆だと思うのね。僕が毎晩やっていることだって、有料ダウンロードだったら誰も聴かない。聴いた結果、この曲は良かったから、じゃあ佐久間さんに十円送ってあげようとか、そんなことのできるシステムがあればいい。それは聴いた人の心の問題だから。それでいいと思うんだよね。

―― 「後払い」ということですよね。そこで共有した時間に価値を感じたかどうか。

Image from Amazon.co.jp
イン・レインボウズ

佐久間 たとえばレディオヘッドが一度やったじゃない。それで、みんなお金を払ったわけでしょ? もちろん、皆が皆できることじゃないけど。それはとても正しいことだと思うのね。少なくとも僕らは芸人なんだから、それでいいじゃんって思うよ。

レディオヘッドが一度やった : 2007年リリースのアルバム「In Rainbows」のダウンロード版は、購入者に制作者が信用をゆだねるという「性善説」にもとづき、聴き手がみずから値段を決めて購入する方式が採られた

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