米国と台湾が半導体をめぐり、新しい貿易協定に合意した。
米商務省によると、両国は2026年1月15日、貿易協定に署名した。米国側の発表は、「半導体セクターの大規模な国内回帰を促す」ものだとしている。台湾の製品を米国に輸出する際、米国が課す相互関税は「15%以下」とされる一方で、台湾側は、米国の半導体のサプライチェーン、AI、エネルギーに対して総額2500億ドル(約40兆円)を投資するという。
中国が台湾に対する圧力を強める中で、今回の合意は大きな意味がある。たとえば、新型コロナウイルスの世界的な大流行や、ロシアによるウクライナ侵攻といった事態が起きれば、半導体を含むあらゆる製品のサプライチェーンは機能不全になる。ロシア、ウクライナの両国はいずれも半導体の製造に欠かせない材料を輸出しているからだ。そうした事態を想定し、米国としては半導体のような重要な物資を、米国内で製造できるように「国内回帰」を進めている。
米国のラトニック商務長官は、15日CNBCのインタビューに対して、「半導体のサプライチェーンの40%を米国に移転することが目標だ」と述べている。台湾の半導体と言えば、半導体の受託製造の世界最大手TSMC(台湾積体電路製造)の存在が圧倒的に大きい。TSMCは、すでにアリゾナ州フェニックス市に工場を運営しているが、今回の合意で、台湾の半導体関連金業は、さらに米国で製造して米国の企業に半導体を売る体制を整備することが求められるのではないか。
米国に欠かせない台湾の存在
実際、米国にとって台湾は死活的に重要な存在だ。米国の台湾依存を示すデータやエピソードは少なくない。
2023年11月に米国の政府機関である米国国際貿易委員会が公表した『台湾の半導体産業への米国の依存度』という、そのものズバリのタイトルの報告書がある。2年2カ月前に公表された報告書ではあるが、台湾は、世界の半導体の製造能力のうち18%を占めているが、先端半導体の製造能力については、92%が台湾に集中している。残る8%は韓国に製造能力がある。
「先端半導体」という言葉だが、おおむね7ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の微細な製造技術で製造された半導体を指す。技術の進化にともない、どのくらい微細な技術で製造された半導体が「先端」に当たるのかについては、変化していく。こうした先端半導体は、AIの計算に必要な画像処理装置(GPU)、ハイエンドなスマートフォン、自動運転車などに使われている。高精度なレーダーやミサイル、自律的に対象を攻撃するドローンなどにも先端半導体は搭載される。
したがって、台湾で、感染症の流行や地震、台風といった自然災害、電力不足や水不足などの事態が起きれば、先端半導体のサプライチェーンは機能不全になるリスクを常に抱えている。とくに大きな影響を受けるのは、米国だ。
TSMCの開示資料によれば、2025年度第4四半期の決算で、TSMCの収益のうち74%を米国が占めている。中国は9%、欧州と日本はそれぞれ4%とされる。報告書は、台湾で先端半導体の製造が停止する事態が起きた場合、川下の製造事業者が支払う価格が59%上昇する可能性があると指摘している。ここで言う川下の製造事業者は、エヌビディアやインテル、アップル、グーグルと読み替えて差し支えないだろう。TSMCから先端半導体の供給がストップすれば、エヌビディアもアップルも商品をつくれなくなる。
サプライチェーンごと米国に移転

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