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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第370回

レアアース、中国と険悪なら海底から取ってくればいいじゃない

2026年01月13日 07時30分更新

文● 小島寛明

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 中国政府が、レアアースを含む軍民両用(デュアルユース)品目の日本への輸出規制を強化した。

 2026年1月6日のロイターによれば、中国商務省は同日、軍事用と民生用の両方に利用できる品目の日本向けの輸出を禁止すると発表した。中国政府の輸出規制強化は、高市早苗首相の台湾有事に関する発言に対する対抗措置とみられ、テレビのニュースを含む大手メディアも大きく報じた。レアアースやレアメタルを含む重要鉱物の調達が滞れば、自動車を中心とした日本の産業には、大きな打撃がある。

 しかし、中国政府が8日の記者会見で、「民生用途の輸出には影響しない」(8日付ロイター)と述べたことで、強い警戒感は後退した。自衛隊の装備を製造している重工業の分野などは、中国から材料や部品を調達する際に、中国政府による厳しい審査の対象になるが、普通の乗用車の材料や部品といった民生用の品目についてはそこまで厳しい審査をしないといった期待感が出ているようだ。

 ただ、この数日間の動きから、需要鉱物について、「調達先として中国以外の選択肢はないのだろうか」という疑問が浮かんでくる。調べてみると、「中国以外」を模索する動きは、けっこう前から続けられている。たとえば海底から取ってくる、別の国から買う、使用済みの製品から資源を取り出してリサイクルする、そもそも重要鉱物なしで作るといった解決策だ。

海底から取ってくる

 まず、海底からレアアースを取ってくるという選択肢だ。海洋研究開発機構などが1月11日から、南鳥島周辺の海底から、レアアース元素の含有量が高い泥を採取する試験を実施している。

 南鳥島は、日本の「最東端」の島だ。調べてみると、東京都小笠原村に属している。2025年12月23日の海洋研究開発機構のプレスリリースによれば、地球深部探査船「ちきゅう」から水深6000mの海底まで、揚泥管を伸ばして、海底の泥を採取する。揚泥管は、海底までパイプを下ろして、泥を吸い込む装置のことだろう。

 レアアースを多く含む泥は「レアアース泥」と呼ばれているが、南鳥島周辺の海域から採取できるレアアース泥には、ヘビーレアアース(重希土類)が含まれているとみられている。

 重希土類の中でも現在、重要だと考えられているのは、ジスプロシウムとテルビウムだ。ハイブリッド車や電気自動車のモーターに使われるネオジム磁石の耐熱性を高めるため、添加剤として使われる。ディスプレイなどに使われるイットリウムも豊富だとみられている。こうした重希土類の輸出は現在、中国が独占的な地位を占め、日本も重希土類については、調達の100%を中国に依存している。

コスト的に実現可能か

 これほど重要で、中国に依存せざるを得ない重希土を海底から採取できるなら、素晴らしい解決策と言うほかないのだが、気になるのは、海底から掘り出すコストだ。レアアースを海底から取ってくるという選択肢は、コスト面でも実現可能性があるのだろうか。

 調べてみると、レアアースを海底から掘り出すには、やはりコストがかかる。レアアースは、採掘して精錬しなければ売り物にならない。中国のレアアースは地上から取り出すため、海底と比べて圧倒的に採掘のコストは安い。しかし、中国のレアアースは、岩の状態で掘り出すため、岩を粉砕し、溶かす工程が欠かせない。さらに、レアアースには放射性物質を含むため処理費用がかかる。

 一方、海底から採取するレアアース泥の場合、粉砕は必要ないし、溶かす工程も簡単だとされる。さらに、レアアース泥には、ほとんど放射性物質が含まれないと説明されている。つまり、海底から引き上げる作業にはコストがかかるが、その後の工程では、コストが抑えられるということのようだ。

 現時点で確認できる研究機関の説明を読んでいると、期待が高まってしまうが、水深6000mからレアアース泥を引き上げる試験は「世界初」(海洋研究開発機構)だけに、採算性のある事業として動き出すにはまだまだ時間がかかるだろう。

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