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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第355回

苦悩するCPUの王者インテル

2025年09月30日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 インテルが苦悩を深めている。

 インテルはこれまで、半導体メーカーの王者だった。この10日ほどのインテルに関連するニュースを確認すると、ほとんど「なりふり構っていられない」ほどの苦境にあるようにさえ見える。

 2025年9月18日には、やはり半導体大手のエヌビディアが、インテルに対して50億ドルを投資すると発表した。エヌビディアは、約4%のインテル株を保有することとなった。

 1週間後の9月24日付のブルームバーグは、インテルが、アップルに対して出資を打診したと報じている。さらに、25日付のロイターによれば、インテルは、台湾の半導体受託製造世界最大手TSMCに対しても、出資や提携の可能性について打診を始めたという。

 10日ほどの間に表面化しただけでも、3社に対して出資や提携を働きかけ、うち1社は出資を得ている。素人目に気になるのは、エヌビディア、アップル、TSMCの3社はいずれも、インテルにとって競合する企業でもある点だ。インテルの経営危機は、どこまで深刻化しているのだろうか。

2020〜2021年には過去最高も、赤字に転落

 最近のインテルの決算を確認すると、同社の経営難は2022年ごろに始まったと考えられる。インテルの売上は、2020年度は779億ドル、2021年度790億ドルと、2年連続で過去最高を記録している。この2年度については、コロナ禍の影響でリモートワークが拡大し、PCの需要が急増した時期にあたる。

 しかし、2022年度になると、リモートワーク需要は一段落し、インテルの売上は一気に下落する。過去最高だった2021年と比べて20%減と、大幅な売上減を記録している。この年は、世界的にPCの売上が急減したことで、インテルの売上も大きく下落したと考えられている。

 2020~2022年の3年間については、コロナ禍による、特需と需要の一段落で説明がつくのかもしれない。しかし、2023年以降もインテルの経営難は続き、2024年には通期で赤字を記録している。2025年1月31日の朝日新聞は、「38年ぶり」の通期赤字と報じている。

AI特需に乗り遅れたインテル

 インテルが通期赤字に転落したのは、複数の要因が重なっているようだ。

 まず、AI特需の影響だ。世界的なAIの需要拡大に伴い、IT大手各社は、データセンターへの投資を拡大している。CPUで長く覇権を握ってきたインテルにとっても商機に見えるが、データセンターではCPUよりもGPUに需要がある。GPUについては現在、エヌビディアがほぼ一強状態の立場を築いている。このため、インテルは、AI特需に乗り切れなかったと分析されている。

 次に、台湾のTSMCの存在だ。インテルは、先端半導体の量産化で出遅れた。2020年7月25日付のロイターによれば、インテルは7nm半導体の量産が遅れたため、外部への委託を強化するとの方針を発表している。先端半導体の製造では、台湾のTSMCが世界をリードしている。インテルとしては、7nmなどの先端半導体の製造をTSMCに委託せざるを得ず、外部委託にかかる費用が、インテルの収益を圧迫する要因になっているようだ。

 さらに、AMDとの競争も激しさを増している。AMDは、一強インテルに挑むCPUメーカーとして知られているが、時間をかけて少しずつインテルからシェアを奪っている。SteamというPC向けのゲームのプラットフォームは、ゲームで遊ぶ際に、ユーザーがどのメーカーのCPUを使っているか毎月データを公表している。この統計では、2025年7月にAMDのシェアが初めて4割を超え、インテルとAMDが6対4の比率でPC向けゲーム市場を分け合う構造になっている。サーバー向けのCPUでも、AMDはインテルを激しく追い上げている。

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